258: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/04/21(土) 08:41:40.92 ID:SE5eH/sS0
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ところが、だ。ここに公に出来ない秘密がある。
コツコツと積み重ねて来た二人の関係を根底からひっくり返しかねない程の。
「千鶴さん、ただいま」
「お帰りなさい。今日はいつもより少し遅めですのね」
「思ったより収録が長引いちゃいまして……。クタクタですよ」
「まあ、それはお疲れでしょう? さあさ、こっちにいらっしゃいな」
部屋の中の電灯がともる。背広を脱いだ男は食卓を整え腰を下ろす。
「……この匂い、コロッケかな?」
「ふふっ。大好物、でしたわよね」
「はい、とっても! 本当に、千鶴さんがくれるコロッケはいつも美味しくって――」
そうして不意に箸を止めた。同時に一人芝居も幕を下ろす。
マンションの自室、孤独な食卓。白米が盛られた茶碗と皿のコロッケ。
時刻は零時をとうにまわり、テレビもついていない部屋の中は実に静か。
その、いかにも深夜然としている室内には、男の他にもう一つだけ人の形をした物が存在した。
人形。リアルな、大人の女性を模したソレは、彼が多くは無い貯金で購入に踏み切った自我を持たない偶像(アイドル)だった。
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