153: ◆Xz5sQ/W/66[sage saga]
2018/01/21(日) 18:57:18.36 ID:kNu55X8Eo
「二人とも私を追って森の中に? 特にコロ、お前には村を任せたハズだったが……」
するとコロと呼ばれた鎧の少女が大槌の構えを解いてから。
「もぉ〜、マスター! ロコの名前はコロではなくてロコですってば!!」
頬を風船のように膨らませ、自分の名前を訂正した少女に続いて女性が言う。
「コ、コロさんは私を守るために、あえて、一緒に来てくれて」
「カレンまで!? ロコです! ロ〜コ〜!!」
「あぅっ!? そ、そうですよねロコさん。ご、ごめんなさい……!」
そんな二人のやり取りに、チヅルはやれやれといった様子で肩をすくめると。
「とにかく、無事でよかった」
ポンポンとロコの頭を撫で、チヅルはカレンに顔を向けた。
「カレン」
「は、はい」
「君が香を用意してくれたお陰だな。こちらもだいぶ被害を被ったが、
それでもヴァンパイアを罠にかけ討つことができた」
「そんな……騎士様。私にはただ、先祖から伝えられた薬草の知識があっただけです」
謙遜するようにそう言って、カレンが表情を曇らせる。
「なのに村の人たちだけでなく、騎士団の皆さまにまで多くの犠牲を出してしまい……」
悔いるように語るカレンだが、旅の薬草医としての彼女の知識無くては得られなかった勝利だった。
彼女が特別に調合した吸血鬼の力を封じるという香の力をもってなお、村を襲った怪物を止めるのは容易でなく……。
「それでもケリはついたのだ。村人たちも久方ぶりに、怯えることなく夜を明かすことができるだろう」
仇(あだ)を包む炎の明るさに目を細めて、
チヅルは命を散らした無辜の民と、勇敢に戦った仲間たちの死に黙祷を捧げる。
そう、怪物は討ち倒され、村にはようやく平穏が戻るのだ。
自分と同じように怪物の最期を見届けるロコたちの横顔を眺めながら、
チヅルは失った物も多くあるが、それだけの価値ある結果が残ったと自分に言い聞かせるのだった。
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