113: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/11(土) 09:39:02.37 ID:zjG9pEgO0
なるべく刺激を与えぬよう、団員たちがゆっくり包囲を広げていく。
プロデューサーもじりじりと、蜂を見据えながら朋花との距離を離していく。
そんな周囲の行動を目だけを動かし確認すると、朋花はホッとしたように息を吐き。
「そう、もうこれ以上は何もせず自然の流れに任せましょ――」
刹那、プロデューサーが再び丸めたポスターを振りかぶった。
朋花が僅かに息を止め、「へくしゅっ!」と可愛くくしゃみをした。
その際の頭の上下運動に、蜂も思わず彼女の頭から飛び立って――。
「でぇいっ!!」
ポスターが風を切った後、パンと素晴らしい音を響かせる。
蜂がブブンと円を描き、団員たちの遥か頭上を飛び去って行く。
頭を思い切りどつかれた、朋花がぐすっと鼻を鳴らす。
「いや、あの、これはその! ……一撃必中というか何と言うか――」
「聖母の頭をはたくなんて……。素晴らしい度胸をお持ちですね〜」
「ワザとじゃないんだ! 不可抗力で……あっ! ああっ!」
さて――ヒーローが事態を解決すれば、助けられた人々は祝福を与えるものである。
感謝の言葉、プレゼント、そして中にはみんなで彼の体を持ち上げて。
「お・し・お・き……です!」
「やめろ! 止めさせて! 俺が悪かったから、とっ、朋花さま〜っ!!」
胴上げさながらに団員たちに持ち上げられ、プロデューサーが涙を流して訴える。
だがしかし朋花は無慈悲に掲げた指先を、劇場の横に面した海へ向かって無言で振り下ろしたのであった。
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