103: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/06(月) 02:29:53.02 ID:VPgwpRAe0
===13.
その日、周防桃子は朝からゴキゲン斜めだった。
劇場内の控え室にて。手近な席に陣取ると、いかにもといった体でむくれている
その幼い少女の虫の居所が悪いワケを同席する真壁瑞希は知っていた。
知っていて、しかしそれでも「どうしました?」の一言すら彼女は発することもせず、
手元に広げた手品道具の手入れに精を出していた次第である。
「……ねぇ瑞希さん」
だが、素知らぬ振りをする瑞希のことを桃子は暇人であると見なした。
見なし、声かけ、自らの持つ鬱憤を吐き出すために彼女との距離を縮めて切り出した。
「今日のみんな、変じゃない?」
はて、変とは一体どういうことか?
瑞希は磨いていたコインを卓に置き、顔だけを桃子に向けて考える。
「変……ですか?」
「変だよ。ヘン、すっごく変!」
時間稼ぎにと訊き返してみるが、問題解決には至らない。
桃子は頬杖をついてぶーたれると、「聞いてくれる?」と瑞希を見上げつつ。
「朝からみんなコソコソして、桃子と会うのを避けてるみたい。こっちから話しかけたって、どこか上の空って感じの返事だし」
「はぁ、そうなんですか」
「ほらそれ! 今瑞希さんがしてるみたいに」
ビシッと指さし指摘され、瑞希が「困ったぞ」とその眉を寄せた。
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