8: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2017/09/18(月) 22:41:41.03 ID:n8F8dLyB0
あの一ノ瀬志希が自身の嗅覚の異常を疑っているという事態に、飛鳥はとっさの反応ができなかった。
そんな飛鳥を楽しげに眺めた後、志希はふとどこか遠くを見るような目になった。
「今朝事務所にきたら、知らない匂いだったんだよ」
知らない匂いがした、ではなく知らない匂いだったというのはつまり。
「事務所そのものの匂いが、知らない匂いになっていたということか?」
飛鳥の解釈に志希は頷きで応える。
「建物の匂いはそこで過ごす人達の生活が積み重なったものだから、昨日今日で変わるものじゃないんだよねー。それこそシュールストレミングみたいな強い臭いで塗りつぶすぐらいしないと」
そんなことをされたら、流石に飛鳥でも気付くだろう。
「うん。だから匂いが増えたんじゃなくて、減ったんじゃないかっていうー。でも昨日今日で建物に染み付いた匂いが消えるわけないし、あたしの鼻が特定の匂いを認識しなくなったのかもって思ったわけ」
でもわざわざ晶葉の機械を使っても、志希の嗅覚に異常は見られなかった。
「あたしの記憶が正しければ、昨日と今日で建物の匂い成分に大した違いはない。でも実際にあたしは嗅いだことのない匂いを感じててー」
すん、と鼻をならして志希は科学者らしくないが志希らしくもある考えを言った。
「まるでずっと事務所にいた誰かが、証拠も匂いも記憶も消し去っていなくなったみたいなんだよねー」
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