【トトリのアトリエ】トトリ「一緒だね」
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1:名無しNIPPER[saga saga]
2017/09/16(土) 19:21:04.79 ID:E5Im33K60
 いつものアトリエのいつもの風景。 

 暇を持て余した彼女がアトリエを訪れて。

 わたしが釜をかき混ぜて、彼女はソファに座って本を読む。特別言葉を交わすことは無い。いつも通りのアトリエの、いつも通りの風景だ。

 レシピを見ながら素材の詰まった箱と釜とを行き来して素材を釜に入れ、錬成されるものの姿を想像して釜を混ぜる。一日中集中を保ち釜と向き合い続けなければいけないのだから、それを楽しめる人間でなければとてもやっていられない。こんなことよくもやっていられるものだ。
 どうしても疲れが溜まって来た時には、横目で彼女を見る。姿勢よく上品に座って読書に耽る姿。ページを捲る指の動きにすら気品がある。節々に見せる上品な仕草からは、貴族としての彼女が、心に曲がることの無い芯を持っていることが窺える。
 すぐに視線を戻し釜を混ぜる。気のせいかもしれないが、少しだけ活力が沸いてきたかもしれない。

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2:名無しNIPPER[saga saga]
2017/09/16(土) 19:21:55.84 ID:E5Im33K60
 涼しさに包まれた気持ちのいい午後だ。

 暑い暑い夏はもうすぐ終わろうとしている。あれだけわたしたちを照らしつけていた太陽の日差しももはや懐かしい。窓から爽やかな風が部屋の中に吹き込んだ。

 釜をかき混ぜる音とページを捲る音だけが静かに響く空間。この世にわたしたちとこの部屋だけがあるように感じられた。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga saga]
2017/09/16(土) 19:22:25.03 ID:E5Im33K60
「ん、あ……」

 眠りから目が覚める、意識がゆっくりと起き上がってきた。
 あれ、いつもソファで眠るのに。珍しくベッドで眠っていることに気付く。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga saga]
2017/09/16(土) 19:22:56.80 ID:E5Im33K60
「おはよう、ミミちゃん」
「さっき聞いたわ、おはよう。一緒に食べましょう」

 のろのろと椅子に座り、机に置かれたコップから水を飲む。わざわざ朝食を用意してくれたのか、申し訳ない。6時も回っていない。空もまだ白んでいる。
 ミミちゃんが作ってくれた朝食を一緒に食べる。わたしもミミちゃんも早く起きすぎてしまったな、どうしよう。まだ完全に起きていない脳で仕事に向かって行きたくない。早朝から朝へとちょっとした空白が生まれてしまう。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga saga]
2017/09/16(土) 19:23:31.41 ID:E5Im33K60
 硝子のように澄んだ早朝の空気の中をミミちゃんと共に歩いて行く。すれ違る人も少しだけ居たが、ほとんどわたしたち二人だけの世界を、人気の無い道を歩く。昼には人で賑わうこの街が黙り込んでいた。なんだか夢の中のように現実味が無い。
 今もなにか言葉を交わすことは無い。ミミちゃんも、この空間に声を吐き出すことを嫌っているのだろう。わたしたちの間にはそんなものは無くてもいい。隣にいればそれでいい。

 どれだけの人間が、そんな関係を持つ人間を見つけることができるだろうか。いや、きっとありふれたもの、誰でも手に入れることができるものなのかもしれない。それでも、わたしはとても貴重なもののように感じていた。
 そうか、ミミちゃんとわたしはそんな関係になれたのか。


6:名無しNIPPER[saga saga]
2017/09/16(土) 19:24:39.65 ID:E5Im33K60
 自然とわたしたちの足はいつも通り街の外れの並木道へと向かっていた。昼であっても通る者の少ない、街からいくらも離れた並木道にはもはや誰一人も見当たらなかった。そういう人達にとって、ここはいわゆる穴場なのだ。

 ゆっくりと並木道を歩く。ざわざわと葉を揺らし、体を透いて流れていく風が心地良い。薄着では少し寒さを感じてしまうけれど。
 ミミちゃんと手を繋いでこの並木道を歩けたならとても素敵だろうな。
 そうか、繋いでしまえばいい。
以下略 AAS



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