6:名無しNIPPER[saga saga]
2017/09/16(土) 19:24:39.65 ID:E5Im33K60
自然とわたしたちの足はいつも通り街の外れの並木道へと向かっていた。昼であっても通る者の少ない、街からいくらも離れた並木道にはもはや誰一人も見当たらなかった。そういう人達にとって、ここはいわゆる穴場なのだ。
ゆっくりと並木道を歩く。ざわざわと葉を揺らし、体を透いて流れていく風が心地良い。薄着では少し寒さを感じてしまうけれど。
ミミちゃんと手を繋いでこの並木道を歩けたならとても素敵だろうな。
そうか、繋いでしまえばいい。
隣に歩くミミちゃんの手を掴むと、彼女の体が跳ねた。この子は素直じゃないけれど、分かりやすい。わたしだけに見せるミミちゃんをわたしだけが見れることが嬉しかった。
彼女の手はふわふわと柔らかい。少し厚い、包み込むような皮膚の下に猫のようにしなやかな筋肉が感じられる。
この手に触れるとこができるわたしはなんて幸運なことだろう。指を絡めると簡単に紅くなってしまうミミちゃんはとても愛らしい。
これ以上に充ちた朝には出会うことが出来ないかもしれない。ミミちゃんと共にいる限りは分からないけれど。
葉は散り始め秋の訪れを感じさせる。はらはらとわたしたちに葉が舞い落ちてきた。冒険に出ずとも、こんなふうに情緒ある風景に出会える。きっとミミちゃんのせいだ。彼女と共に眺めては、なんでもないものであってもたった一つの宝物のように感じられるのだ。
こんなに美しい並木道ばかりではない。木々も枯れ果てた大地であっても、それでもミミちゃんがいてくれたら美しさを見出せるはずだ。きっとそうだ。
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