103: ◆Vcl4B/DaxY[saga]
2017/09/24(日) 13:21:34.19 ID:prdGZkfz0
【中庭】
中庭には変わらず薔薇が咲いている。
天草「花には心を癒す作用が御座います」
昨日見た時には気づかなかったが、ここには白い薔薇や黄色い薔薇もあるようだ。
稲羽「……」
私は天窓の方を見上げる。窓越しに、広大な空が広がっている。
きっと……出られますよね。
稲羽「……」
けれど、リーチカさんを貫いた槍を思い出す。彼女の身体からは血が溢れ、僅かな鉄の臭いがそれが現実だと教えてくれた。
また……あんな事が起きてしまわないでしょうか?
天草「幸運の方、死を恐れておりますか?」
天草さんの言葉に思わず心臓が跳ねる。全て見透かされているように思えて、身体が強張る。
稲羽「天草さんは……その、怖いですか?」
私は緊張のあまり、質問を質問で返してしまった。
そんな見当違いな言葉に対して、天草さんは表情一つ変える事無く答える。
天草「……ええ。怖いですよ。それはとても」
天草「死とは恐ろしいものです。生命は等しく死んでゆきます」
天草「死は生を享受している以上は避けようのないものでしょう。現世に産まれた時点で我々には常に死が付きまとう」
天草「しかし例え死が避けられないものだとしても……そこに至るまでを悔い無きように生きていく」
天草「きっと、それだけで人心は救われると私共は感じております」
稲羽「……」
悔いのないように……
私に、死んだ後で悔いる事はあるでしょうか。
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