百合子「愚者の私に出来ること」
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4:名無しNIPPER[saga sage]
2017/09/15(金) 18:48:16.07 ID:GkhDt2Oq0
「じゃあじゃあ、百合子ちゃんはどう? やっぱ咲洲先輩みたいに中校受けた系です?」

 百合子。七尾百合子。私の名前だ。

 だけどその名前を呼んでいるのは、三年生じゃなくて、この美術部を取り仕切る二年生グループのリーダー格みたいな女子で、当然のごとく私の後輩に当たるわけで。

 彼女は中途半端に敬語こそ使っているけど、そこに私に対する敬意とは言わないまでも、何か心遣いのようなものがあるとは思えない。

 別に私は、上下関係に対して厳格なこだわりがあるとか、そんなことは決してない。むしろ、言ってしまえば体育会系気質なそういう風潮があまり好きではない方に属していると思う。だけど。それでも。

 後輩たちがその子に追従して、私の名前を呼び捨てる。百合子。両親から呼ばれたときのような温もりもなく。百合子ちゃん。友達に呼ばれたときのような優しさもなく。百合子さん。大好きな、一個下の妹みたいな子に呼ばれたときのような、胸の奥を温めた真綿で包まれるような温くも優しい、不思議な思いが湧くのでもなく。

 私は、平たく言ってしまえば、後輩から嘗められている。

 嘗められている、というのもなんだか乱暴で響きが良くない言葉だと思うのだけど、私が置かれている状況を示すのにこれ以上適した言葉もないはずだ。

 それは、私の顔つきがそうさせるのだろうか。それとも美術部に入った他の三年生と比べて背が低かったりするからなのだろうか。一年生の頃は、そうじゃなかった気がするけれど。

二年生になってから、何度考えても答えが出なくて、時には枕を濡らした問いが脳裏を掠める。他に入りたい部活もなくて、だけど何かしらの部に所属することを求められて入ったこの美術部は、最初から居心地のいいところではなかったけど、中学生活の終わりを迎えてみれば、最早牢獄にも等しいものに成り下がっていた。


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