輿水幸子「ボクのなつやすみ」
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9:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:35:53.45 ID:4sMggCAno
朝、祖母にやさしく揺り起こされて目が覚めた。
前日の夜、居間でぐっすり寝入っていた所を家族の誰かが布団の上まで運んだらしかった。

「もうじきラジオ体操始まるけ、さっちゃんも行くかえ?」

「うん……」

幸子はあくびまじりに返事をしてのそのそと起き上がった。

遠くの隣家からニワトリの騒がしい鳴き声が聞こえてくる。
空気が冷え込んでいて肌寒いくらいな朝だった。

パジャマから着替える頃には幸子の頭もすっかり冴えた。
両親がまだ起きて来ないので幸子が面白がって叫びながら布団に飛び掛ったが父も母もうんうん唸るばかりで頑として枕から離れようとしない。

結局、幸子は諦めて祖父母と三人だけでラジオ体操へ行くことにした。


歩くこと数分、村の中心地に近い川べりの空き地へ行くと、そこにはすでに十数人が集まってめいめい話し込んでいる様子が見えた。

半分以上が祖父母と同じくらいのお年寄りである。
もう半分はそれより少し若い中年の男女といったところで、幸子のような子供は他に誰もいなかった。
これにはさすがに幸子もいささかげんなりした。

……が、ラジオ体操が始まる直前、とある若い夫婦が一人の少女を連れて歩いてくるのが見えて幸子は胸が躍った。

背丈から察するに、幸子よりも年下のようである。
その少女は眠そうに目をこすりながら両親に手をつながれていて幸子の存在にはまったく気付いていないようだった。

やがてラジオの音楽が止み、のどかな村にノイズ交じりの男性の声がのびのびと響いた。

幸子は体操が始まるや否や俄然はりきってキビキビ体を動かし始めた。

朝の澄んだ空気の中、限界集落めいた村の中心で、小ざっぱりした格好をしながらエネルギッシュに四肢をふりまわす姿はたいへん目立った。

アイドルという職業柄ゆえか、何においてもまずは目立たないと気がすまないのである。
あるいは、「ここにアイドルの輿水幸子がいる」と気付いてもらいたいという無意識からそうしたパフォーマンスに及んだのかもしれない。



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