4:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:29:30.23 ID:4sMggCAno
幸子は遠慮がちに、びくびくしながら部屋へ足を踏み入れた。
机と椅子、それと一つの本棚が置いてある他には何もない、殺風景きわまりない空間である。
窓は一つしかなく、それがすりガラスになっているために部屋の中はにぶい光が散乱していた。
さすがに蒸し暑かったので幸子は窓を開けて空気を入れ替えようとした。
ところが、その窓ガラスが相当な曲者で、薄っぺらいくせに鍵は固く、またやたらと重いせいで幸子は体重をかけて引っ張るはめになった。
案の定、古びた窓枠は金属の盛大な悲鳴と共にこじ開けられ、幸子もまた情けない悲鳴をあげて尻餅をついた。
その瞬間、生暖かい風が埃を巻き上げながら部屋を吹き抜けた。
そして思い出したようにセミの鳴き声が部屋中に反響しだす。
気付くと、部屋にはもう夏の匂いが満ちていた。
幸子は気を取り直して窓の外を眺めやった。
窓の向こうはすぐ目の前が雑木林になっており、そこから虫や鳥のおびただしい鳴き声が無限に湧き出ているのだった。
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