3:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:28:42.04 ID:4sMggCAno
さて、例の小部屋は幸子の記憶通り、廊下をつきあたった奥にひっそりとあった。
この家では珍しくドアノブ付きの開き戸である。
何も知らなければ物置部屋か便所と思ってしまうかもしれない。
よく見てみると、扉のあちこちにシールを剥がしたような跡があった。
ドアノブに手をかけてそっと回してみるとあまりにも簡単にドアが開いたので幸子は勢い余って反対側の壁に叩き付けてしまいそうになった。
部屋の中から畳の蒸れたような匂いが溢れ出てくる。
幸子はその香りの密度に一瞬息が詰まりそうになった。
思わず咳き込みながら、灯りの点いていない薄暗い室内へと目を凝らす。
かつて祖母に連れられて訪れた時の、少しばかり苦い味のする思い出の風景と、ほとんど何も変わっていないような気がした。
が、一方では不思議に新鮮な気持ちがした。
記憶の中におぼろげに思い描いていた憂鬱な眺めは、今やもうすっかり忘れ去られて、代わりに未知への好奇心に上書きされたのである。……
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