輿水幸子「ボクのなつやすみ」
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2:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:27:43.70 ID:4sMggCAno
そして現在、輿水幸子十四歳の夏、彼女は両親と共に田舎の祖父母の家へ遊びに来ていた。
父親が珍しく長い休暇をもらったので、お盆休みと合わせて十日間ほど滞在する予定になっていた。

ところが幸子は二日目にして早くも暇を持て余してしまったので、何か楽しいこと面白いことはないかと思案を巡らしていたところ、ふいに例の部屋のことを思い出し、そして連鎖するように蘇ってきた昔の記憶を今こそ確かめるべく立ち上がったのだった。

また、それでなくともこの古びた広大な屋敷は、十四歳の少女が思いつきで探検してみたくなる程度には魅力的な建物だった。

幸子は、母親がぼんやりテレビを見ている隙にこっそり居間を抜け出した。
まるで悪戯をたくらんでいる子供である。
そして実際、幸子は自分が急に大胆になったような気がしてわくわくした。

二階へ上がる階段は時々すくみあがるほど不吉な音を立てて軋んだ。
幸子は思わず息をひそめながら、誰にも気付かれないようにゆっくり階段を上って行った。
とはいえ、この時屋敷にいたのは幸子と幸子の母親の二人だけだったので、幸子のこうした緊張はまるで意味を為さなかった。

築ウン十年という木造建築の二階は、作りこそ頑丈にできていたが、床や壁は傷だらけで、おまけに物が散らかっていた。
幸子は二階の廊下を見渡すや否や閉口した。
ビールケースや新聞紙の束、壊れた家電、祖父の仕事道具、その他よく分からない小物があちこちに転がっているのである。
窓から真夏の太陽光線が容赦なく差し込んでいるせいで埃っぽい熱気が立ち込めている。

幸子は足元に気をつけながら廊下の窓をひとつずつ網戸にして外の空気を取り入れた。
そして何気なく窓の外の遠くを見やると、向かいの道路を挟んだ先に畑仕事をしている祖父とそれを手伝っている父の姿を発見し、わけもなく愉快な気持ちになったりした。


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