22:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:48:23.70 ID:4sMggCAno
夕方になり、幸子が帰る時間になると、雪美が名残惜しそうに
「明日も……遊べる……?」
と言うので、幸子は
「もちろんですよ!」
と頼もしく返事をし、翌日会う約束をしてその日は別れた。
母親は帰ってきた幸子の泥だらけの姿を見て驚き、それから服を脱がせてシャワーを浴びさせた。
幸子の肌は日焼け止めクリームを塗っていたにもかかわらず少しだけひりひりした。
幸子は、明日はもっとしっかり日焼け対策をしようと思った。
その後、陽が沈む前に家族でお墓参りに出かけ、行きの車の中で幸子は今日一日の出来事をみんなに話して聞かせた。
運転していた父が懐かしそうに「俺も子供の頃よくあの辺で遊んでたなあ」と呟き、車の中は父と祖父母の昔話で盛り上がった。
そんな話を聞いているうちに、幸子はふと、なぜだか急に寂しくなった。
菩提寺に到着して車を降りると、夕暮れの空には薄くすじになった雲が、藍色からやがて紅に染まりつつある山の彼方へ向かって雄大に伸びているのが見えた。
風のない夕闇にヒグラシの悲しげな声が響いていた。
途端に、この夏の一瞬のまぼろしが、それがまぼろしであるためになお永遠にさえ感じる緩慢さで、思いがけず幸子の目の前を通り過ぎていった。
後にはただ孤独だけが残った。
幸子は放心したまま、陽が沈んで移ろいゆく空模様を眺めた。
これまでの人生と、そしてこれからの人生にも二度とないこの風景をしっかり目に焼き付けようとして……
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