11:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:37:45.96 ID:4sMggCAno
家に帰ると母が起きてすでに朝食を用意していた。
幸子はまたもや自分が手伝いをする機会を逃したことを悔やんだが、代わりにまだ寝ている父親を叩き起こすという使命を与えられて喜んで寝室へ向かった。
哀れな父親は娘に馬乗りにされ、ほっぺをぐりぐり引っぱられ、終いには布団をひっくり返された挙句ようやく起き上がった。
さて、朝食を済ませると幸子はさっそく祖父に頼んで畑に連れてもらった。
もちろん畑仕事を手伝うためである。
祖父は幸子の殊勝な申し出を大いにありがたがったけれども一方では心配する気持ちもあった。
「幸子、無理しんなや?」
「心配しなくても大丈夫ですよ! ボクに任せてください!」
威勢よく返事をする幸子はすでに完全防備の出で立ちである。
長袖と長ズボンを着て日よけの帽子をかぶり、首には真っ白なタオル、手には新品の軍手をはめている。
鏡の前に立ってみるとまるで自分がいっぱしの農家になったような気がして惚れ惚れした。
(こんな格好してるボクもカワイイ……)
これだけでひと仕事終えたような気分である。
しかし実際に畑に出て数十分後、幸子は自分の覚悟の甘さを身に染みて味わうことになった。
単なる草むしりと侮っていたのが想像以上に過酷だったのである。
雑草たちは梅雨明けから夏本番にかけて大地にびっしり根を張ってしまい、幸子の細い筋肉では引っこ抜くことも容易でなかった。
時には体重をかけて踏ん張らなければ抜けないほどで、その度に尻餅をついて泥だらけになったりした。
幸子は祖父に教わりながらトウモロコシ畑の雑草を端から抜いて行ったのだが、腰を落としたまま作業を続けることの労力は並大抵ではない。
まだ午前中の早い時間帯とはいえ気温の高さもすでに殺人級である。
加えて幸子は「普段レッスンで鍛えた体力を今こそ発揮するチャンス」と無駄に張り切っていたので、案の定、畑の四分の一も進まないうちに汗だくになり、早くも雑草を握る手に力が入らなくなった。
若さゆえの過ちとはこのことである。
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