32: ◆97Mk9WqE8w[sage saga]
2017/09/07(木) 21:30:44.58 ID:qeoTwk+V0
次の瞬間、猿に向けてスポットライトのように光が当たった。
「キーッ!」
驚いた猿は、その拍子にプレゼントを落としそうになる。
まゆは心臓が止まるかとも思ったが、なんとか猿の手元に紙袋はぶら下がったままだ。
周りを見てみると、屈強な男たちが投擲網や刺又、照明機、挙句の果てには銃らしきものまで構えている。
(ど、どういうことなの……)
事情が全く呑み込めない。
自分と猿を取り囲む異様な部隊がいったい何なのか、そんなことを冷静に考えるほどの余裕は今のまゆにはない。
なんだか、猿もこの部隊も、全てがまゆのプレゼントを狙っている、そんな気がした。
(おかしい、おかしいですよぉ……あのプレゼントはプロデューサーさんへ渡すものです)
(まゆの愛はたしかに詰まってますけど)
(人類を滅ぼすウイルスでもなければ、世界を救う聖杯でもないんですよぉ……)
膠着状態を続ける猿と部隊の間にあって、まゆのまとうオーラが急激に緊張感を増した。
「……まゆは、プロデューサーに喜んでほしいだけなんです」
そのつぶやきは、その場にいた誰の耳にも入らない。
代わりに、まゆの内に秘めた情愛の中でも、特に切っ先の鋭いものが呼び覚まされ、久しぶりにその目に宿る。
まゆはゆっくりと顔を上げ、部隊を見まわす。
場の空気が変わる。誰もがその目に射抜かれた。
そうして、最後にプレゼントを持った猿に向けて、その視線を貫き通す。
「……あなたたち、邪魔」
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