85:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:55:14.16 ID:+EtVRVLso
〜
夕方になって、花子ちゃんから指定されたのは……駅前だった。
特別な荷物も持たずに急いで外に出た。少しずつ暮れゆく空の下、小走りで目的地へと向かう。
例のお友達がそこにいる……なんてことよりも私にとっては、そこには櫻子がいるんだという意識しかなかった。
目的地が見えてきて、呼吸を整えながらきょろきょろと歩き回る。いったい駅前のどこにいるんだろうと思ったが、直感的に場所がわかった。
駅前にある特徴的なオブジェ。半年前……バレンタインデーの前日に偶然見かけてしまったあの場所。
走ってきたこととは別の意味でドクドクと高鳴る胸を押さえながら……遠巻きにオブジェに近づいた。
向日葵(……!)
私たちくらいの女の子が二人、隣り合っていた。
見慣れない服を着ていたが、片方は櫻子だった。
そして、その隣にいたのは……
向日葵(あの人……)
いつしかに見た、サイドテールの女の子だった。
向日葵(やっぱり……あの人が……)
「ひま姉」とんっ
向日葵「きゃっ……!」
花子「よかったし……間に合って」
いつの間にか後ろに花子ちゃんが来ていて、私の腰に抱き着いてきた。
向日葵「さ、櫻子と一緒だったんじゃなかったんですの?」
花子「ちゃんと一人で話せるからって、花子はのけ者にされちゃったし。先に帰ってていいよって」
花子ちゃんはすがすがしい笑顔だった。
櫻子たちが並びあって言葉を交わす様子を眺める。残念ながら声までは聞こえない位置だった。
でも二人とも……悪いムードではなさそうだった。
向日葵「私……あの子をうちの近所で見かけましたわ、昨日」
花子「櫻子が全然会ってくれないから、よくこっちまで来てたんだって。偶然会えたことなんて一回もなかったみたいだけど……でも、しょっちゅう家の方に散歩にきてたって」
向日葵「…………」
花子「そのくらい……櫻子のことが好きだったんだし、あの人は」
恥ずかしそうに髪をいじったり、時折笑いあったりしながら、二人は話していた。
積もる話もあるだろうに、人通りも少なくない夕方の駅前で。
まだ雪が残っていたあの冬の日、可愛らしいコートを着ていた二人は、半年たってこの夏空の下、あのときとは違う笑顔を浮かべられるようになっている。
105Res/202.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20