82:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:52:07.44 ID:+EtVRVLso
撫子さんは料理道具が置かれている棚からすりこぎ棒を取り出した。
なにか料理に使うのかと思ったら、まるで剣先を向けるかのように私にぴっと指してきた。
向日葵「なっ……!?」
撫子「極端に言っちゃえばさ、私が今ひま子をこれでぽこっとやって、気絶させたとする。そのまましばらく起きなくて、夜になって目が覚めたとき、櫻子は隣に帰ってきてくれてるよ」
向日葵(…………)
撫子「要はその間をどう過ごすかってことだけでしょ。贅沢な時間だと思うなぁ……私だったら、翌日に一緒に遊びに行くデート先でも下調べして待ってるけどね」
そうだ、吉川さんたちと約束したんだった。
次は必ず、櫻子と一緒にあの家に遊びに行くんだって。
撫子「マイナスなことを考えない。もっと楽しいことと明るいことに目を向ける。これも大事なことだよ」
向日葵「そう……ですわね」
撫子「行ってくればいいじゃん……櫻子の元カノに会いに。今まで櫻子を支えてきてくれてありがとうって言ってあげてもいいくらいだよ。ライバルって思わない方がいい。向こうも同じ女の子なんだから。ひま子も一緒に友達になってきちゃえば」
向日葵「わ、私がその人のところに行ったら……刺されちゃったりしないでしょうかっ」
撫子「……悪いけど、そんな病んでる子を櫻子は好きにならないと思うよ……」
撫子さんは呆れた様子で携帯をいじりだした。気づけば自分の手はぜんぜん進んでない。しゃかしゃかとボウルの中をかきまぜていると、突然耳元にぴたっと何かがあてられた。
向日葵「ひゃっ!」びくっ
撫子「ほら、話しな」
向日葵「えっ、ええっ!? ちょ、これ何ですの!?」
撫子「櫻子に電話かけたから。これが一番でしょ」
向日葵「えー!?」
勝手に耳と肩の間に携帯をはさまれてしまって、慌ててボウルを作業台の上に置き、しっかりと両手で電話を取る。コール音はいくつもしないうちに繋がってしまった。
『もしもしー? ねーちゃん?』
向日葵「あ、あ……櫻子?」
櫻子『え、向日葵っ!? な、なに……どしたの?』
向日葵「ち、違うんですのよ!? 撫子さんが勝手に携帯を渡してきたんですの!」
撫子「ひま子が早く櫻子に会いたいってよ」ぼそっ
櫻子『え……///』
向日葵「ちょっとぉ! 変なこと言わないでください!」
撫子さんが顔を近づけてきて、勝手に声を吹き込んでくる。電話口の櫻子もなんだか困惑している様子だった。
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