58:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:34:16.09 ID:+EtVRVLso
――あの子とは、入学後すぐに仲良くなった。
向日葵と離れてしまった過去を後悔しながらぼーっとしているときに、向こうから話しかけてきてくれたんだっけ。
本当はそこまで外交的でもないくせに、一生懸命フレンドリーにふるまって、私を友達グル―プのひとつに誘ってくれた。
その子のおかげで、私は向こうの学校での生活も面白いと思えるようになった。
向日葵がいない間の寂しさは、その子たちが解消してくれた。もしもこの友達グループの中に向日葵がいてくれたらなあ、なんて思いながら楽しく過ごせた。
授業中、休み時間、放課後、休日、学校行事のときも、私は友達や花子のおかげで元気にすごすことができた。
向日葵のことはずっと秘密にしてた。一回もその名を出したことはない。みんなは仲良くしてくれてるのに、本当は転校したいんだなんて誰にも言えなくて、テストもないのに勉強漬けだった私のことを、みんなはよく怪しんでたっけ。
夏休みには、花火大会に誘ってくれた。綺麗な綺麗な花火をみんなで見た。夜空の火花に見とれてたら、突然あの子がほっぺにキスしてきた。「いまどき友キスくらい珍しくないよね」って笑う真っ赤な顔を見た時、私の心は確かに揺れ動いた。
――向日葵、覚えてる? バレンタインデーの前日。
私、あの子から誘われてたんだよ。バレンタインデーに会えないかって。でも向日葵が先に予定をつけてたから、その前日でも構わないかってお願いした。
普通さ、だめじゃんそんなの。バレンタインデー当日に会うことに意味があるのにさ。でもあの子は……私と一緒に過ごせるのならそれでも構わないって、承諾してくれた。
隠しごとができない子なんだよ、私なんかより全然。もっと私にわがままとか言ってくれていいのに、いつもわたしのことを一番に優先してくれちゃうの。
私は一言も口を割らなかったのに、いつの間にか学校では、私が転校するっていう噂がどこかから漏れちゃったらしくて、噂話がちょこちょこ耳に届いてきた。
その子もそれを知ったから、会おうと決めた日に勝負をかけたんだと思う。私はすっごく悩んだ。どうすればいいのかわからなくて、前日も勉強しなきゃいけないのに頭が働かなくなっちゃって、逃げるように眠りの世界に逃げ込んだ。
でもやっぱり、付き合うわけにはいかなかった。そんな中途半端な気持ちで編入試験を受けたら落っこちちゃうって。
向日葵があれくらいの時期になって、急にお菓子を届けにきてくれるようになったから、私は強く向日葵のもとに戻るんだって決意し直せるようになったんだよ。
この一年間やってきたことを無駄にしないように、私は必ず向日葵のもとへ戻る。だから……あの子とは、友だちのままでいようねって言った。
「それじゃ嫌なの」って、言われちゃった……はじめてあの子が自分の意見を強く言った。
はじめてだよ? はじめて。友達よりも先の関係になってほしいって誰かに言われたのは。
向日葵よりも先に、あの子に言われてたんだよ……私。
櫻子「ちゃんと断れなかったんだよ……あのとき、向日葵が見てたとき……」
向こうの学校と私を結びつける最後の鎖を断ち切れないまま、私は向日葵のもとへと戻った。
向日葵に転校のことを打ち明けて、向日葵にキスしてもらって、向日葵に告白されて、向日葵と一緒に手をつないでいるとき。
手首につながったあの子との鎖を見ながら、自己嫌悪してた。
櫻子「昨日、花子にあの子からのLINEを見られて……めちゃくちゃ怒られた。私なんかに、向日葵と付き合う資格はないって……」
向日葵「…………」
櫻子「私……ひどいことしてた。向日葵にも、花子にも、あの子にも……///」ぽろぽろ
許してほしかった。
誰に対しても中途半端に接してたこと。
誰も傷つけたくないなんて思いが、結果的にみんなに対して失礼な対応になってたこと。
あの子と繋がった鎖は、私を引き留めるためのものだと思ったけど……違った。
私があの子を縛りつける鎖でしか、なくなってたんだ。
櫻子「ごめん……本当に、ごめん……っ」
向日葵「櫻子……」
本当に謝る相手はここにはいないのに、私は謝り続けた。
向日葵もねーちゃんも、そこからは何も言ってくれなかった。
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