49:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:28:51.53 ID:+EtVRVLso
せっかく勉強ができるようになった櫻子に、これから先の難しい中学の範囲を教えて欲しかったのに、花子の勉強を見てくれる櫻子はもういない。
そろそろ疲れたでしょって、缶に入ったクッキーと紅茶を差し入れてあげることもない。新調したティーセットを使ってくれる櫻子はもういない。
みてみてすごいでしょ、私また一番になったんだよって、テストの成績を見せてくれる櫻子はもういない。
ざあざあの雨が降っても、お化けの声みたいな強風が吹いても、けたたましい雷が鳴っても、「大丈夫だよ」って頭を撫でてくれる櫻子はもういない。
学校であったこと、お勉強して気づいたこと、友だちと話したこと、いっぱい遊んだこと、それを聞いてくれる櫻子はもういない。
靴下を履いたまま眠りたいくらい寒い夜に、こっちの方があったかいじゃんって、ベッドに入ってきてくれた櫻子はもういない。
並んでベッドに入って寝たふりをしているときに、花子を抱きしめて「いつもいつもありがとう」って言ってくれる櫻子はもういない。
早く起きなきゃ遅刻しちゃうのに、あと5分、あと5分と、むにゃむにゃ人のベッドにしがみつく可愛い櫻子はもういない。
雪かきしなきゃ家から出られないからって、二人で一生懸命雪をかくうち、雪合戦をしかけてきて花子に怒られる櫻子はもういない。
この服はいいよ、この服はまだだめ、この服はこうしたら似合うんじゃない? と、花子に洋服をゆずってくれる櫻子はもういない。
今日は久しぶりに向日葵に会えたんだよって、楽しそうに話してきたあとに、突然感情が決壊して泣き出す櫻子はもういない。
おなかいたい、おなかいたいってうなりながら、花子がそばについてお腹をさすってあげなきゃいけない櫻子はもういない。
勉強で疲れてソファでお昼寝しちゃって、花子が揺り起こしたら「今ね、花子が夢に出てきたよ」って笑いかけてくれる櫻子はもういない。
この広い静かな家に、
花子はひとりになる。
もう、櫻子はいない。
花子(……やだ)
そんなの、やだ。
花子「やだ……やだ、やだぁ!」だんっ
105Res/202.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20