50:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:29:18.78 ID:+EtVRVLso
頭がガンガンと痛む。
全身に力が入らなくなり、ひざから崩れ落ちる。
ものすごいめまいがして、乗り物に酔ったみたいに気持ち悪くなる。
花子は倒れた。ものすごい疲労感に襲われた。
視界の端に、ほつれた白いレースがひらついた。さっきベンチでひっかけたときに、着ている服のレースリボンがとれてしまったのだ。
急いで直さなきゃ。櫻子が帰ってくるまでにこの服を元に戻さないと、怒られちゃう。
そうだ、櫻子はまだこの家にいてくれる。花子と一緒にいてくれる。今日このあと帰ってきてくれる。
またあとでこの服を譲ってもらえないかお願いしてみよう。花子が可愛く着こなせているのを見たら、櫻子もこころよく譲ってくれるかもしれない。
ソーイングセットはどこだっけ……ふらふらする頭で必死に考えて、よろけながら探した。このくらいのほつれ、花子だって頑張れば直せるんだから。
櫻子の大切な服。櫻子の大切なもの。これを着て、また櫻子と一緒にどこかへ出かけたい。
花子と、櫻子と、ひま姉と、楓と、撫子おねえちゃんで。みんなで一緒に、遊びに行きたい。
櫻子、櫻子、櫻子。小さく名前を呼びながら、戸棚を漁ってソーイングセットを探す。
生地のはしくれをどかし、ミシンをどかし、確かここにあったはずなのにと、薄れた記憶を頼りに目的のものを探す。
ふと、戸棚の奥に、何か紙が落ちているのを発見した。
少々古ぼけた、折りたたまれた謎の紙。
こんなところ滅多に開けないから、今まで気づかなかった。
誰かの落とし物だろうか。
開いてみると、それは……
花子(え……)
子供の字で、落書きがされている……婚姻届だった。
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