48:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:28:05.50 ID:+EtVRVLso
部屋の端っこから、リビング全体を見渡す。なんだかいつもより、とっても広く見えてしまう。
再来年、櫻子が都会の大学に行くことになったら。
櫻子は、この家を出ていくことになる。
きっとひま姉も、櫻子と一緒に行っちゃうんだ。
撫子おねえちゃんは大人になって、お仕事をするようになって。
楓はそのときまだ小学生だから、中学生の花子とは離れちゃう。
あ、花子は一人になるんだ。
中学生になったら、もう誰もこの家にはいないんだ。
学校が終わって夕方家に帰ってきても、一緒に宿題をしてくれるお姉ちゃんはもういない。撫子おねえちゃんも櫻子も、もういない。
お母さんたちが帰ってくるまで、花子は一人。そう、今みたいに。
こんな静かな家に、一人っきりなんだ。
花子は一人でごはんを作らなきゃ。夕飯の当番をやってくれる櫻子はもういない。
簡単なごはんを作ってきて、こんなのしか作れなくてごめんねって、情けない顔で笑う櫻子はもういない。
たまにはいいもの食べなきゃって、レシピを調べて一生懸命作っても、おいしいおいしいと食べてくれる櫻子はもういない。
お夕飯の後のデザートを買ってきたから、それまで勉強頑張るぞって、このリビングで気合いをいれて勉強する櫻子はもういない。
こがらし吹く寒い日に家に帰ってきても、先に帰宅してリビングの暖房をつけておいてくれる櫻子はもういない。
今テレビでこうしてる子が映ったから! って、抱き付いてぎゅーしてくる櫻子はもういない。
花子がお風呂に入ってるときに、時間節約とかいって、勝手に乱入してくる櫻子はもういない。
背中を流してくれて、花子の髪を褒めながら優しい手つきでシャンプーしてくれて、ドライヤーをかけながら髪を梳いてくれる櫻子はもういない。
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