櫻子「これからも一緒に」
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47:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 17:26:40.63 ID:+EtVRVLso


家に戻ると、相変わらず怖いほどの無音に包まれていた。


花子「た、ただいま……」ぱたん


櫻子たちが帰ってくるのは夜のはず。やっぱりまだまだ誰もいない。

しーんとした家に耳を澄ませていると……ちょっとだけ怖くなった。なんだか胸がばくばくする。


花子(いけないいけない……そんなことより、撫子おねえちゃんたちが帰ってくるんだから、その準備をしなきゃ)


すっかり忘れてた。今日は本当は遊んでる場合じゃなかった。


掃除機をごとごと引っ張り出し、大きなリビングからかけていく。普段はちょっとうるさいと思う掃除機君の音も、静かすぎて怖い一人きりの家では寂しさを紛らわせてくれた。


お部屋を掃除して、お夕飯のお買いものに行って、撫子おねえちゃんたちを迎える。ああ、間に合うだろうか。


撫子おねえちゃんが帰ってくるのは春休み以来だった気がする。何かお土産をくれるかな。いつも向こうから帰ってくるときに買ってきてくれる、甘いお菓子がまたもらえるかもしれない。


櫻子が帰ってきたら、今日は気合いをいれてお説教しなきゃ。お姉さんと話したことをちゃんと伝えなきゃいけない。子供みたいな意地を張ってないで、ちゃんとお姉さんと仲直りしてからじゃなきゃ、やっぱり櫻子にひま姉と付き合う資格はないと思う。


色んなごたごたを片付けてから、花子の誕生日をめでたく迎えたい。こんなの本当は花子じゃなくて櫻子が自分から率先してやることなのに。本当にしょうがないんだから。


お姉さんは櫻子と会って、何を一番話したいんだろう。別れ話をちゃんとつけたいのか。それともまだほんの少しの望みをかけて、櫻子にアタックしたいのか。櫻子に謝ってほしいのか。櫻子をビンタしたいのか。櫻子と一緒に、花火大会に行きたいのか。


お姉さんの流した涙を思い出す。水色の空を閉じ込めた涙。櫻子は幸せ者だ。自分のことであんなに綺麗な涙を流してくれる人がいるんだから。


お姉さんは櫻子のどこが好きだったんだろう。だって櫻子は向こうの学校で、人付き合いがよさそうな感じではなかったのに。


ミステリアスだとかなんとか言ってた。櫻子がミステリアス? そんなのおかしくて笑っちゃう。でもやるときはやるところとか、話せば楽しいところとか、そういうのはなんとなくわかる。花子も……櫻子のそういうところは、尊敬してるから。


二人はどのくらいの友達だったんだろう。きっとあのお姉さんが、櫻子の前の学校で一番仲の良かった子のはずだ。


花火大会以外にも、たくさんの思い出を作ったのかもしれない。席が前後同士なんだって、櫻子が昔言ってた気がする。櫻子がすぐ傍の席にいるって、どんな感じなんだろう。授業中でもいっぱいちょっかいを出してきそう。居眠りとかもしちゃいそう。でもそれはきっと中学までの話だ。高校での櫻子は……たぶん、かっこよかったろうから。


掃除機を切ってリビングを眺めた。あのテーブルで勉強していた去年の櫻子を思い出す。テレビも何もつけずに、静かな部屋で、櫻子のシャープペンがさらさらとんとんと紙の上を走る心地よい音だけがする空間。そこで花子もお昼寝をしたっけ。陽が落ちて夕方になっても櫻子のペンのペースは変わらなくて、本当に櫻子は頑張ってるなあって、毎日思ってた。


大学のオープンキャンパスってなんなんだろう。そこが気に入ったら、櫻子もひま姉もその大学に言っちゃうのかな……撫子おねえちゃんみたいに。


花子「…………」


掃除機の音はやっぱりけたたましくて、たまらずにスイッチを切った。突然ものすごい身体から力が抜けていった。



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