9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 01:27:54.46 ID:+EtVRVLso
心の中では、いつかはそうなると思っていた。でも今じゃないと思い込んでいた。けど一方で、いつでもそうなってよかったと思う自分もいた。むしろ……そうなりたかった。
互いの気持ちが拮抗して、凝り固まってできた大きな壁。私はこの壁に身体を預けてもたれているときが、一番安心感を得られる時間だった。壁の向こうではきっと櫻子も、同じようにして壁に背を預けていた。
いつかはこの壁を壊すときがくる。いつかは必ず壊さなきゃいけない。
どちらが先に動き出すかはわからなかった。私は「なるようになる」と、時の流れに身を任せていた。
でも櫻子は……そんな現状に、我慢できなくなったのだろう。
動き出さなきゃ、動かない。自分から強い意志を持って行動しなければ、一生何も変わらない。そう思ったのだ。
昨日のメッセージは……きっと何日も前から書きしたためていて、何度も送ろうとしては断念してを繰り返して、誤字が無くなるほどに推敲を重ねて、撫子さんにも相談したりして、やっとのこと昨日、私に送り届けられたのだろう。
最後の「おやすみ」に込められていたのは、送ってしまえば「あとはもうどうにでもなれ」という気持ちだったのかもしれない。
思い切って送信ボタンを押して、そのままベッドに飛び込んで、何も考えないようにして眠ったのだろう。
あとのことは全部、明後日の自分にまかせると。
そうでもしなきゃ、送れなかったのだ。この子には。
教室に到着すると、まるで同じ極同士の磁石のように櫻子はすいっと私から離れ、目も合わせずにかばんを置いて、他の友達との談笑の輪に入っていった。
その華奢な背中が……今の私には、いつもよりちょっとだけ大きく見えた。
向日葵(ありがとう……櫻子)
私には出せなかった、勇気を出してくれて。
「ひーまわーりちゃん、おはよっ」
向日葵「あら、吉川さん、赤座さん」
あかり「実はあかりたち、ずっと向日葵ちゃんたちの後ろにいたんだけどねっ? なかなか話しかけられなくって」
ちなつ「二人の様子がいつもと違うような気がしたから……もしかして、また喧嘩でもしたの?」
向日葵「ふふ、そう言われると思いましたわ」
不思議そうな顔をしている友人たちに、言葉では説明できない高揚感を笑顔で返す。
なんだか今日は、いい日になりそう。
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