4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 01:24:57.38 ID:+EtVRVLso
もしかして。
もしかしたら……私にとって、嫌な話かもしれない。
たとえば……そう、
大室家が遠くに引っ越してしまうとか。
だってそれくらいのことじゃなかったら、こんなに回りくどいことをしてくるはずがない。
櫻子は確かにいたずら好きだけど、こんな不可解なことはしてこない。
そういえば最近のあの子は、どこか思いつめたような顔をしていることがあった。
ぼーっとしていて、どこを見てるのかわからなくて、体調でも悪いのかと気にかけても、私には「大丈夫」としか言ってくれない。
思い返せば、わがままや文句を言う頻度も減ってきたような気がする。
ふとしたときに、私に優しくしてくれることが増えた気がする。
私の話で、楽しそうに笑ってくれることも多くなった。
なんとなくあの子に目を配ったとき、たまたま視線が合ってしまって、気まずそうにしていることもよくある。
1ヶ月ほど前の私の誕生日……あの子はやけに素直にしていて、すごく一生懸命お祝いしてくれたっけ……
向日葵(あれは……何のため?)
向日葵(もしかして……本当に、遠くに行っちゃうんですの?)
向日葵(最後くらいは、って気持ちで、優しくしてくれてたんですの……?)
考えれば考えるほど、そうとしか思えなくなってしまった。
手の甲を額に乗せて、くらくらと痛みだす頭を抑える。
そんなことあるわけない。
私と櫻子が離ればなれになるなんて、そんな……
さっきまで頭の中の櫻子に文句をぶつけていたのに、今はただ、あの子の優しい顔を思い浮かべることしかできなかった。
でもまだわからない。ひょっとしたら何かいい報告をされるのかもしれない……必死にそう思い込もうとしたけど、どうしたって頭は最悪のケースを想像してしまう。
私は静かに目尻から溢れる涙を、枕に染み込ませた。
神様、どうかそんなひどいことはしないで。
私は……あの子がいないと……
毛布をぎゅっと握りしめながら、強く強く祈った。それだけを一心に祈った。
力尽きて眠ってしまうまで、ずっと。
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