25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 01:38:50.48 ID:+EtVRVLso
〜
かっち。かっち。
向日葵「…………」
家について、楓を花子ちゃんのところにお願いして、自分の部屋に戻った私は、何をするでもなくただ座って時計とにらめっこをしていた。
最初は5時を少し回ったくらいのところだったのに、時を刻む秒針の音を聴きながら櫻子のことを考えていると、恐ろしく早く時間がすぎていく。
ああもう少しだ。もう少しで来てしまう。私と櫻子が「友達」として過ごしてきた長い長い時間が、あと数分で終わりを告げてしまう。長いようで短かった。本当にこんな瞬間が来てしまうんだ。なんて言われるんだろう。なんて話せばいいんだろう。なるようになるしかない。あの子だって緊張しているはず。ちくたくちくたく。着実に時間が刻まれていき、もうすぐ6時というところで、家のチャイムが鳴った。
玄関を開けると、夕陽よりも真っ赤な顔になった櫻子が、もじもじと立っていた。
向日葵「……あ」
櫻子「…………あっ」
向日葵「い、いらっしゃい」
櫻子「うん……っ」
向日葵「どうぞどうぞ、中へ」
櫻子「お、おじゃまします」
ぎこちない挨拶をすませて、櫻子を中へと招き入れる。私の家に訪れた櫻子が「お邪魔します」と言ったのは何年ぶりだろう。スリッパを用意してあげたのなんて初めてかもしれない。櫻子も言われるがままにぱたぱたと私の後ろを歩き、一緒に部屋へ入った。
どんなレイアウトにするか迷いに迷ったが、私は部屋の真ん中に、二つの座布団だけを敷いておいた。その片方に私が正座する。櫻子ももう片方にすっと正座し、私たちは正面から向き合った。
向日葵「…………」
櫻子「…………」
しばしの静寂が流れる。櫻子は座りながら、少しだけ乱れた洋服をなおしていた。よく見ると髪も綺麗に整っている。私ももう少し身だしなみを整えておけばよかった。
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