19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/09/07(木) 01:34:22.25 ID:+EtVRVLso
向日葵「確か……昨日のこのくらいの時間でしたわね。あなたが送ってきたの」
櫻子「……うん」
向日葵「私、本当に寝ちゃう寸前だったんですのよ。よかったですわね、ギリギリ間に合って」
櫻子「……べつに、いつ見てもらっても構わなかったけどね」
向日葵「でも私……あれを読んで急に眠れなくなったんですの。櫻子が何を言おうとしているのか、本当にわからなくて」
櫻子「…………」
向日葵「……もしかしたら、急に引っ越すとか言われるんじゃないかと思って……久しぶりに泣いてしまいましたわ。怖くて……悲しくて」
櫻子「ええっ……!?」
向日葵「ごめんなさい……これだけは、改めて聞かせて? あなた……どこか遠くに行ったりなんてしませんわよね?」
櫻子「しっ、しないよ! そんなの絶対にしない!」
向日葵「そう……よかった」
櫻子「ごめん……そんなこと思わせてたなんて、知らなくて……」
向日葵「いいんですのよ。それがあったから私、あなたのことを……もう一度真剣に考えることができたんですの」
櫻子「向日葵……」
向日葵「どこにも行かないで、いなくなったりしないでって、神様にお願いしながら眠りましたわ。だからこそ気づけたんですの。私、やっぱりあなたのこと、本当に……」
櫻子「え……」
向日葵「……あ」
櫻子「だ、だめだよ!? それだけは言っちゃだめだからね!? 明日にしてよ?」
向日葵「……そ、そうですわね、この言葉は今言っちゃだめですわね」
櫻子「……でも、向日葵がそんなことまで考えてくれてたなんて……嬉しい、かも」
向日葵「そう?」
櫻子「うん」
向日葵「……で、私はそんな感じだったから、今朝のあなたを見たときは、本当になんというか……ホッとしたんですわ」
櫻子「あー……今朝ね」
向日葵「あなたってば、あんな意味深なメッセージ送ってきたくせに、全然隠せてないんですもの。もう全部の内容が顔からダダ漏れって感じで」
櫻子「うるさいなぁ……私だってずっと恥ずかしかったんだよ。送っちゃったからもうどうにもならないけど、まだまだ心の準備できてなかったし」
向日葵「……そういえば、撫子さんはなんで知ってたんですの?」
櫻子「毎晩私がうんうん唸りながら送ろうか送るまいか悩んでたから、うるさいって怒られて、成り行きで話すことになっちゃって」
向日葵「……私も今、撫子さんにこの家の鍵を開けてもらって来たんですけど、『はいはいそういうことね』って感じの顔をされましたわ」
櫻子「も〜……今も聞き耳立ててんじゃないの実は? あー見えて結構汚いとこあるよねーちゃんは」
向日葵「さすがにそこまではしないと、信じたいですけど」
暗闇の中、櫻子が使っている毛布のしわを指でいじくりながら、小声で話し合う。
こういう会話を、私はずっとしたかった。いつもなら何かと張り合ってしまうことが多い私たちだけど、自分の素直な気持ちを真剣に話せば、櫻子だって大人しく聞いてくれる。
心から想う言葉を伝えて、櫻子からの気持ちを受け取る。そんな優しいキャッチボールが、今までの私たちにはずっとできなかった。なんだか出会って間もない、喧嘩なんてしたこともなかった、あの頃の私たちに戻れた気がした。
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