美竹蘭「陽が落ちて」青葉モカ「夜が明けたら、また」
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9: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/09/03(日) 19:45:15.42 ID:6LMiOYr90
 お通夜みたいな空気をどうにかごまかして、あたしは家に帰ってくることができた。自分の部屋に入って、扉を閉めたら……すとん、と膝から崩れ落ちた。身体を支える力も残ってなかった。

「最近は特にバンドに打ちこんでいて、時折部屋から歌う声が聞こえてきたものです。だから、ショックも大きかったんじゃないかと」

 蘭パパの言葉が頭をよぎる。無理しないようにってみんなで見張ったから、蘭は自主練習の場所を自分の家に……誰にも文句を言われない場所に変えていた。

 蘭のあの表情が頭にこびりついて離れてくれなかった。追い詰められて追い詰められて、致命的に、壊滅的に、どうしようもなく、押しつぶされたその末の……何も残ってないって言わんばかりの空っぽの表情。それでもなお、自責の言葉で自分を傷つけ続ける姿が。

 大きくかぶりを振る。今、ここで。あたしまで折れていいはずがない。蘭を傷つけたまま、自分まで勝手に傷ついて諦めていいはずがない。だって、蘭はこんなにも弱さを見せてくれた。あたしが一緒に抱えたい蘭の重荷を伝えてくれた。だったら、できることはいくらでもあるはずなんだ。

 これ以上蘭を悲しませたくない。ただ笑っている顔が見れれば、今はそれだけでいいから。



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