荒木比奈「なぜ私がプロデューサーを避けるのか」
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13: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/08/31(木) 02:05:12.94 ID:IdirkYgi0
「食べ物っスね」
彼の要望を受けた私は、レジ袋から三つのゼリーカップを取り出し彼に見せる。
「みかん、パイン、イチゴ、どれがいいっスか?」
いつもおやつ用に買っているものより少しだけ贅沢したゼリー三つ。彼は三つを右から左へ、左から右へ見比べ、
「みかんで…」
と答えた。
「分かりました、ちょっと待ってください」
私はみかんを寝床の縁に置き、パインとイチゴのカップを持ち冷蔵庫へ向かった。冷蔵庫に二つのゼリーを入れて、その足でスプーンを食器棚から拝借する。ついでにコップも借りた。かなり汗をかいていたし、水分補給もしなければならないだろう。幸い、スポーツドリンクも買ってきてる。
「お待たせしました」
スプーンとコップを片手ずつ携え、再び彼が寝ている場所へ。まだフィルムを剥がしていないみかんゼリーの上にスプーンを置き、スポーツドリンクをレジ袋の中から取り出す。キャップを外して注いで、彼に差し出す…前に、ゼリーがなくなってることに気がついた。
「…いただきます」
彼の方を見ると、フィルムを既に剥がし終えていて、合掌し、ゼリーを少しずつ口に運ぶ彼の姿がそこにあった。カップの上にスプーンを置いたから「これでどうぞ」と言う意味に捉えたのだろうか。
私はスポーツドリンクを注いだコップを、零れないように手に持って、彼の食事姿を眺める。空腹だったのか、少しずつではあるけれどもがっつくように食べる彼。その姿を見るだけで、なぜか嬉しかった。
出来れば「あーん」ってしたかったけど、それはまた今度の機会にと言うことで。今はこの食事する姿だけで、私は十分。
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