荒木比奈「なぜ私がプロデューサーを避けるのか」
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12: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2017/08/31(木) 02:00:14.16 ID:IdirkYgi0

彼をベッドに寝かせ、おでこに冷却シートを貼り付ける。

「ぁあ゛〜…ありがとう…」

とても気持ち良さそうだ。私も作業中に何度もお世話になっているからその気持ちよさは分かるし、貼り付けた瞬間のひんやり感に敵うものはないとも思っている。

「熱はどのくらいあるんスか?」

ふと彼の枕元の体温計が目に入り、さっき少し体に触れたときから気になってた疑問を投げかける。

「…37度くらい」

「本当は?」

「………8度5分」

「やっぱり」

「…ごめん」

「気なんか遣わないでほしいっスよ」

「…ごめん」

「謝らないでもほしいっス」

全くこの人は。この人のことだから、強がりとかじゃなくて私を心配させまいと言った嘘だろうけれども、そう言う無粋なことはしてほしくない。仕返しにと、私は彼のほっぺたをぷにっと指先で押す。

ぷにぷにぷにぷに。やってみると意外と楽しいことが分かった。ハマりそう。

「あの…比奈…そろそろ…」

彼に言われて、つつきすぎたと気づいた。人差し指をほっぺたから離し、ごほんとわざとらしく咳をする。

「…で、何かしてほしいこととかないっスか?」

「何か…」

「遠慮とかはなしで」

さっきみたいに気を遣われても困るので、先手を打ち、条件付きで彼にしてほしいことを尋ねた。彼は少しだけ思考を巡らせ、答えてくれた。

「……お腹が空きました」

どうしてか、敬語だった。



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