281: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2017/09/30(土) 10:34:41.33 ID:ktVirj9S0
地震からおよそ1ヶ月が経過した頃、ほたるが事務所を訪れた。
「みんな、久しぶり」と手を振るその顔は、どこか固く、緊張しているように見えた。
ほたるが語ったところによると、この1ヶ月、ほたるは負傷の連絡を受けて見舞いにやってきた母親と共に、鳥取県の実家に帰省していたらしい。休養の理由については、頭部に衝撃を受けたことによる、軽い後遺症が残っていると説明した。
それから数日後、ほたるから担当プロデューサーに「しばらくは仕事は受けずにレッスンに専念させてほしい」と申し出があり、プロデューサーとトレーナーで協議し、これを承諾した。
休養を明けてからのほたるは、ブランクのせいか、それとも後遺症の一環か、歌にもダンスにも、どこかぎこちなさが見られ、到底ステージに上げられるレベルではないと判断されたからだ。他の寮住まいのアイドルから、「箸の使い方がヘタになった」と言ってスプーンやフォークで食事しているとの報告も上がっている。
復帰当初は、はたしてカンを取り戻せるのだろうかと危ぶまれたものだが、仕事を取らない代わりに他のアイドルよりも多くスケジュールされたレッスンを、ほたるは執念にも似た熱心さで取り組み続け、歌やダンスの違和感はまたたくまに改善されていった。表現力に至っては、前よりもいいぐらいだとトレーナーは言った。
また、後遺症のひとつに、自分のロッカーの場所を覚えていないといった軽度の記憶障害があったが、同僚アイドルたち、特に寮住まい組の協力もあり、今では日常生活に困るようなことはないらしい。
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