240:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:07:00.04 ID:1qpUpdjR0
「……えま……か?」
べったりと張り付くような空気が漂っていた。
月は雲に隠れ、星も見えない息苦しい夜空が世界を覆っている。地上に広がる都市は不出来なランタンのように灯りを散らす。
駅前の雑踏。ぼんやりとした灯りに照らされる人々の顔は、幽鬼のようであった。
仮に、ここに幽霊が居たところで、人と見分けはつかないだろう。
仮に、ここに異界への入り口があったとしても、誰も気付かないだろう。
仮に、ここに人ではないモノが徘徊していたとしても、誰も気にもとめないだろう。
「おまじないは、いかがですか?」
雑多な音を切り裂いて、童女のあどけない声が聞こえた。
偶然、一人の女性がその声を聞き取った。
「素敵な素敵な、恋のおまじないはいかがですか?」
女性は立ち止まり、蒼と碧の瞳で声の主を見る。
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