233:名無しNIPPER[saga]
2017/09/20(水) 23:34:06.38 ID:yNCJI72m0
「はぁ……はぁ……」
しばらくの間走っていた私は、知らない住宅街で、ようやく我に返ることができた。
体力には自信があるが、こんなに息が切れている。相当走ったのかもしれない。
……自分のことなのに"かもしれない"だなんて恥ずかしいけど、それだけ余裕がなかったってことだと思う。
しばらく、何も考える気になれなかった。
息を整えながら歩く。ふと気がつくと公園の周りにいた。
「ちょっと休もうかな……」
公園ならベンチの1つはあるだろう。別にブランコに座ってもいい。それは良いことでも悪いことでもないんだし。
そう思いながら、公園の入り口に近づいた瞬間。
ポーン ポーン
「……え?」
私の横を、ボールが、多分サッカーボールだと思うんだけど、そんなことはどうでもよくて。
公園から目の前の道へ飛び出していった。
一瞬、思考に空白が生まれる。
そこから、私の脇をすり抜ける、小さな1つの影。
止まっていたアタマを無理やり現実に引き戻す。
ボールを追うように飛び出す影なんて。相場は決まっているから。
反射的に振り向き、目に入ってくる情報を無理やり飲み込んでいく。道路の向こうにボールが転がり、それを追う、子ども。
さらに視界の端からは大きな、大きな。
「危ない!!!!!」
叫ぶと同時に体は動いていた。
さっきまでの悩みとか、体の重さとかそんなものは置き去りだ。
迫り来るモノに子どもが飲み込まれそうになる。
届け! 届け!
ドン! と、必死に手を伸ばして、子どもを突き飛ばした。
その子が道路の向かい側で尻餅をつく姿を見届けて。
ザザザッ!
道路の真ん中に滑り込む。
自分の体を向こうまで持っていく余裕はなさそうだ。
ブレーキの音が、これでもかというくらいに耳に突き刺さる。
ああ、走馬灯なんて、見えないんだな。とか思い、なが、ら――
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