192:名無しNIPPER[saga]
2017/09/19(火) 20:03:43.42 ID:k1yJYnNv0
広いライブ会場は開演を待ち望むファンの期待感に満たされていた。
袖から顔を出すことはできないが、その熱気は十分に伝わってくる。
舞台袖から回れ右をして廊下へ進むと、揃いのTシャツを着たスタッフが慌ただしい様子ですれ違う。
開演前のこの空気が何とも言えず好きだ。薄暗くスポットライトの当たらない舞台の裏側は、客席とはまた違う熱気を帯びている。
観客もスタッフも、ただ一人の女の子のためにここにいる。それがまたいい。
そしてそれは、プロデューサーの俺も変わらない。
廊下の角を曲がり、進んではまた曲がる。
「私の不幸をステージに持ち込まないようにしたいんです」と、彼女の強い希望で一番遠い部屋を楽屋にしているので、入り組んだバックヤードをちょこまかと進み続けなければならない。
ようやく『控室』のプレートが挟まれたドアの前までたどり着くと、一呼吸おいてから扉を開ける。
部屋の主、つまり今夜の主役は一人部屋にも関わらず一番隅の席に座っていた。
そんな担当アイドルが部屋に入った俺に顔を向ける。
「あ、プロデューサーさん……」
白菊ほたるが、微笑んだ。
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