【艦これ】羽黒「司令官さん、私、信じていますね」
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4: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 19:02:26.56 ID:YDsn8rSZ0
今、僕の指揮下には重巡1、軽巡1、駆逐4の戦力がある。
これは通常の艦艇ではなく、”艦娘”と呼ばれる少女たちで構成された部隊である。彼女たちは、一人で戦闘艦一隻分の力を発揮できるのだ。
僕自身のことについて言えば、書類上は東京の艦隊司令部の直属の隷下であるが、実質的には横須賀・呉の両鎮守府の下に所属している。
明朝から開始される作戦も、両鎮守府の要請によるものだ。”要請”と言っても、僕には断ることが許されておらず、だからそれはほとんど”命令”に等しい。
5: ◆m9ZGL07ULFKn[sage saga]
2017/08/21(月) 19:04:14.05 ID:YDsn8rSZ0
一睡もできないまま、いつの間にか夜は明けていた。
指令室で6人の少女たちに命令を訓示し、出撃していくその姿をそのまま見守る。
空の指令室の中で、僕はやりきれない思いを抱えていた。
それが何への怒りなのか、悲しみなのか、憎しみなのか。それすらもわからなかった。
6: ◆m9ZGL07ULFKn[sage saga]
2017/08/21(月) 19:06:17.94 ID:YDsn8rSZ0
「問題は、小さな問題に分けて考えるの」
頭の中で、彼女の声がした。
僕はそれだけで全く心が震えてしまう。ボロボロになりそうになる。
7:名無しNIPPER[sage]
2017/08/21(月) 19:09:28.06 ID:2UPr4/Ne0
期待
8: ◆m9ZGL07ULFKn[sage saga]
2017/08/21(月) 19:09:41.31 ID:YDsn8rSZ0
人類が海の覇権を失ったのは、ほんの少しだけ前のことだ。
たった数年前。僕が大学生だった頃、漁船もフェリーも貨物も、ありとあらゆる大きさ、種類の船が、外航も内航も自由にできていたのだから。その当時はそれが日常だったし、そんなことは当たり前すぎることだった。今のようになるなど、誰も考えてもいなかっただろう。
だから最初のころ、異常は見過ごされていた。それは日本だけの問題ではなかった。世界中どこを探しても、その『黒いクラゲ』に興味を持つ人間などいなかったのだ。
『黒いクラゲ』の調査が始まったのは、それが日本近海で大量に発生し、問題を起こしてからだった。
9: ◆m9ZGL07ULFKn[sage saga]
2017/08/21(月) 19:14:19.57 ID:YDsn8rSZ0
しかし、次第に不自然な点が目立ち始めた。
まず、『クラゲ』は今まで確認されてきたどの生物でもなかった。新種だったのだ。新種が大量発生し、しかも日本近海に押し寄せる? そんなことは常識的に信じられなかった。
次に、『クラゲ』は、その生体サンプルを水槽で飼育すると、数がどんどん増えていった。生殖しているのだ。しかしそれもまた不思議なことだった。彼らは"そのままの姿で"増えるのだ。研究者や学生たちは常に記録を付けていて、成長途中のものがいれば、気付かないはずがなかった。1mはあろうかという物体が、突然に増える? そんなものを科学者が信じられるはずもなかった。
こうして、大学の共同研究は分野を超えて進められることになった。
10: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 19:16:17.68 ID:YDsn8rSZ0
『クラゲ』の研究は、芳しくなかった。
そもそも増え方も餌も何もわからない生物を調べろと言っても、限界があった。切り裂いてみても、そこに筋肉がある、消化器がある、といった当たり前のことしかわからなかった。ただ、水槽での観察の結果、泳ぐ機能がそこまで発達していないことがわかり、漁業的な対策法は編み出されつつあった。端的に言えば、他の大型クラゲへの対策法の流用である。
一応の『問題解決』を持ち、『クラゲ』の存在は、世間からは急速に忘れられていった。
11: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 21:46:16.15 ID:YDsn8rSZ0
事件が起こったのは、そのひと月後である。
『クラゲ』を入れていた水槽が、一斉に割れたのだ。
国内でそれを生体保存していたすべての大学・研究機関で、同時に。
12: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 21:54:07.35 ID:YDsn8rSZ0
水浸しの実験室の中で、僕はその物体と向かい合っていた。
それは巨大で、全体は光沢のある黒に染められていた。
目の前は口だった。見慣れた、人間のような歯並びだったが、スケールの違いはそれをただ不審で恐怖を増す存在にしていた。目は青く光っていて、僕はただ戦慄を覚えていた。
13: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 22:07:23.96 ID:YDsn8rSZ0
暫く経って、僕はでもそのままだった。生きていて、腕に何かが触れている感覚は、いつの間にか消えていた。ゆっくりと目を開く。
「ご主人さま?」
目の前に、セーラー服を着た赤い髪の少女が見えた。
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