【艦これ】羽黒「司令官さん、私、信じていますね」
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15:名無しNIPPER[sage]
2017/08/21(月) 22:12:56.04 ID:iQdvNYrjo
乙
面白そうなのでこれからも期待
16:名無しNIPPER[sage]
2017/08/22(火) 01:23:24.31 ID:RCNpVghy0
乙です
17: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:11:16.97 ID:W3bdf8BU0
僕の出会った少女は、「漣」を名乗った。
名前を尋ねた僕に、自分はさざなみと言うのだと、彼女は絞り出すようにそう答えてくれたのだ。
彼女は衰弱していて、記憶が混乱しているようだった。
名前を言い終わった彼女は、沢山の言葉を脈絡もなく口走り、僕の方に倒れてきたのだ。僕は彼女を受け止め、そして奥の研究室まで彼女を運んでいった。ソファに寝かせ、僕も近くの椅子に座った。
18: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:16:29.87 ID:W3bdf8BU0
同時期、海は地獄に化けようとしていた。
突然に海面に浮上した異形の大艦隊が、人間の全ての船舶を蹴散らしていたのだ。
生還者の証言、また僕の今までの経験から考えるに、『クラゲ』として海中に漂っていた深海棲艦たちが急に浮上、航行中船舶に対して無差別な攻撃を行ったのだろう。
19: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:20:15.24 ID:W3bdf8BU0
9時になり、固定タイムが訪れ、僕は僕の見たことを研究室の面々に説明した。
全面的な納得はしていなかったと思うが、”消えた『クラゲ』”、”割れたガラス”、”現れた少女”という、それまたぶっとんだ目の前の事実が、それに不思議な説得力を与えていた。
11時に構内で緊急放送があり、僕は海上で起こっている、不条理で切実な戦闘行為を知ることになった。屋内退避になり、研究室はテレビの視聴所と化した。報道は、まるで映画を流しているみたいだった。その日の夜まで警報は鳴り続き、日本地図は海岸全体が警報地区を示す赤色に塗られ、市町村の名前の次には、『壊滅』の表示が躍った。
20: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:25:17.36 ID:W3bdf8BU0
日本はそれから先の一年、混沌に包まれることになる。
受けた被害の大きさ、命綱であった海運の壊滅、目途の立たぬ復興。
行政は大きく組みなおされることとなり、また国内インフラも限界まで簡素化・統合化された。
注目されたのは『クラゲ』から生み出された少女たちだった。
21: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:40:44.21 ID:W3bdf8BU0
内閣府の直属機関として、「海上激甚災害対策総合研究所」が設立されたのは、主要研究機関の生存者に対する取り調べが大方終わり、事実が整理され始めてからのことだ。
事実というのはつまり、「数人の人間は、敵やその一部を、完全に無害化できる」ということに他ならない。
その研究機関は、「そういう人間の共通点等を見つけ、集めること」「無害化の方法を確立し、事態の収拾を目指すこと」を目的としていた。
22: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:43:58.30 ID:W3bdf8BU0
僕はよく彼女と話した。
あまりに刺激や娯楽の無い生活の中で、彼女の存在は僕にとって癒しだった。恐らくは、彼女にとっても僕はそういう存在だったのではないか、と思う。
彼女は好んで図書室で本を読んでいた。
23: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:46:33.37 ID:W3bdf8BU0
生活に不穏さが入り込んだのは、不快な噂が飛び交うようになってからだった。
「国は、例の少女たちを戦力として投入しようとしている」
それが僕たちに入ってきた最初期の情報になる。
24: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 23:02:54.15 ID:W3bdf8BU0
外部との接続を極限まで拒絶されたその生活の中で、僕は不安と共にあった。
自分の何を、どういう風に研究されているのかわからないことへの怖さ。外部で何が起こっているのか、全く分からないことへの恐さ。
僕は漣を思い出して、彼女の華奢さを思って、時々本当に怖くなった。
どうして彼女すら戦力化しなければならないんだ?
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