【艦これ】羽黒「司令官さん、私、信じていますね」
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11: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 21:46:16.15 ID:YDsn8rSZ0
事件が起こったのは、そのひと月後である。
『クラゲ』を入れていた水槽が、一斉に割れたのだ。
国内でそれを生体保存していたすべての大学・研究機関で、同時に。
12: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 21:54:07.35 ID:YDsn8rSZ0
水浸しの実験室の中で、僕はその物体と向かい合っていた。
それは巨大で、全体は光沢のある黒に染められていた。
目の前は口だった。見慣れた、人間のような歯並びだったが、スケールの違いはそれをただ不審で恐怖を増す存在にしていた。目は青く光っていて、僕はただ戦慄を覚えていた。
13: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/21(月) 22:07:23.96 ID:YDsn8rSZ0
暫く経って、僕はでもそのままだった。生きていて、腕に何かが触れている感覚は、いつの間にか消えていた。ゆっくりと目を開く。
「ご主人さま?」
目の前に、セーラー服を着た赤い髪の少女が見えた。
14: ◆m9ZGL07ULFKn[sage saga]
2017/08/21(月) 22:11:13.52 ID:YDsn8rSZ0
今日の投下はこれで終わろうと思います。
書き溜めはまだあるので、ゆっくりやっていくつもりです。
>>7
支援ありがとうございます。がんばります
15:名無しNIPPER[sage]
2017/08/21(月) 22:12:56.04 ID:iQdvNYrjo
乙
面白そうなのでこれからも期待
16:名無しNIPPER[sage]
2017/08/22(火) 01:23:24.31 ID:RCNpVghy0
乙です
17: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:11:16.97 ID:W3bdf8BU0
僕の出会った少女は、「漣」を名乗った。
名前を尋ねた僕に、自分はさざなみと言うのだと、彼女は絞り出すようにそう答えてくれたのだ。
彼女は衰弱していて、記憶が混乱しているようだった。
名前を言い終わった彼女は、沢山の言葉を脈絡もなく口走り、僕の方に倒れてきたのだ。僕は彼女を受け止め、そして奥の研究室まで彼女を運んでいった。ソファに寝かせ、僕も近くの椅子に座った。
18: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:16:29.87 ID:W3bdf8BU0
同時期、海は地獄に化けようとしていた。
突然に海面に浮上した異形の大艦隊が、人間の全ての船舶を蹴散らしていたのだ。
生還者の証言、また僕の今までの経験から考えるに、『クラゲ』として海中に漂っていた深海棲艦たちが急に浮上、航行中船舶に対して無差別な攻撃を行ったのだろう。
19: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:20:15.24 ID:W3bdf8BU0
9時になり、固定タイムが訪れ、僕は僕の見たことを研究室の面々に説明した。
全面的な納得はしていなかったと思うが、”消えた『クラゲ』”、”割れたガラス”、”現れた少女”という、それまたぶっとんだ目の前の事実が、それに不思議な説得力を与えていた。
11時に構内で緊急放送があり、僕は海上で起こっている、不条理で切実な戦闘行為を知ることになった。屋内退避になり、研究室はテレビの視聴所と化した。報道は、まるで映画を流しているみたいだった。その日の夜まで警報は鳴り続き、日本地図は海岸全体が警報地区を示す赤色に塗られ、市町村の名前の次には、『壊滅』の表示が躍った。
20: ◆m9ZGL07ULFKn[saga]
2017/08/22(火) 22:25:17.36 ID:W3bdf8BU0
日本はそれから先の一年、混沌に包まれることになる。
受けた被害の大きさ、命綱であった海運の壊滅、目途の立たぬ復興。
行政は大きく組みなおされることとなり、また国内インフラも限界まで簡素化・統合化された。
注目されたのは『クラゲ』から生み出された少女たちだった。
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