54:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 21:52:34.93 ID:pXJ6Ifkk0
「……こんな植木鉢、初めて見るわ」
おじいちゃんが苦言を呈しますが、百も承知です。
成型を終えたそれは、口が水平ではなく斜めに切った形をしており、左右だけでなく上下も非対称です。
それは、土を水平に盛ったとき、後背部がまるでステージ背面の壁のようになることを狙ったものです。
当然、ステージに立つのは色とりどりの花々――すなわち、私達アイドルです。
厚みをできる限り薄くしたのは、夕美さんの元気で軽やかな明るさの現れ。
そして、わざと歪に付けた篦目は、成長の余地を残している私達の不完全性の演出に他なりません。
不完全――だけど、今の私の全力を、これに込めたつもりです。
「……ありがとう、おじいちゃん」
「焼き上がってから言いなさい」
それでも、ごめんね。生意気いっぱい言って。
窯詰めの日には呼んでもらえるよう約束をして、私は東京に帰ります。
絶対に――絶対に、良いものにしなくては――!
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