女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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84:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:22:44.24 ID:KsUO0z3M0
「完璧な人になりたかった」と照は言う。

 その言葉は。そしてそれに対する僕の反応は。照に『なにか』を確信させたように見えた。

「私はね、ずっとそんなことを、子供のころから、思っていたんだよ。ちっぽけな自分が嫌でたまらなかった。こんな自分は自分じゃないと、憎んですらいた。君もそうだろう?」

 引きずり出された。そんな気がした。
 なにもかも見抜く、一歩手前の状態。
 照は訴えかけている。本心を話せと。真実をさらせと。

「そうですよ。それが……それがどうしたっていうんです?」

 照は笑っている。

「人は大きすぎた失敗を前に、その原因を求める習性がある。それは根本的で、絶対的な原因だ。

 不完全な世界のせいにする奴。
 特定の誰かのせいにする奴。
 ……そして、自分の能力のなさにせいにする奴。

 何も恨まず、なんて風にはいられない。はけ口を求めているんだよ。理由が欲しいんだ。『なにか』がなくてはやっていけないんだよ」
 無意味さには耐えられない。物事がうまくいかない。じゃあそれはなぜだろうか。
 きっとそれは……。

「そういう風に、何かに負荷をかける。一つに原因を集中するんだ。わかりやすくかみ砕いて、定義を置いておくんだよ」
 もっと能力があればいいのに、と思ったんだ。全部、自分のせいにしたんだよ。運とか奇跡を信用していなくて、世界というのはむしろ敵対者で、だから全部、自分で完結させたんだ。
 そういう意味で、君は僕に似ているんじゃないかな?
「なにかを信じるのがばかばかしかったんだ。そんなものより自分を信じるほうが現実的だった。私はね、なにもかも信用していなくて、世界の全てが大嫌いだったから失敗を全て自分のせいにしたんだよ。でも、君は違ったようだ」
「……」


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