女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:23:11.39 ID:KsUO0z3M0
たしかに。照の言っていることは僕に一定の共感を与えた。しかし、決定的な部分が違っていた。
「そういうことですか。だから照さんは僕を似ている、というくくりでとどめた。同類とは見なさなかった」
まるで、照は……照は『彼女がいなかったら』なっていたかもしれない、僕だった。
「完璧な人になりたかったんです」と僕は言う。
照は黙ってそれを見ていた。
世界は絶対に救われるべきで、けれど救われないのが現実で。
それは、もとはといえば、彼女の受け売りの考えで、僕の考えではなかった。優しすぎた彼女は僕にそれを分け与えた。影響された。決して不満はなかった。例え自分を苦しめる考えだとしても、それでもこの考えは正しいと信じていた。
そんなことを思っていたから、僕は失敗を自分のせいにした。
しかし、照は違う。
「至った結論は同じでも、原点がまるで違う。一瞬見ただけではわからない。そういうことなんでしょう」
「世界は素晴らしくあるべきで、救われるべきだと信じていた」と僕は言う。
「世界とは救いようがない敵対者で、決して信用できなかった」と照は言う。
つまりはそういうことだった。彼はむしろ、最初は僕に対して同族嫌悪を抱いてさえ、いたかもしれない。でも違った。まるで僕らは、別物だった。
照が力なく微笑む。
「私はね、力ない自分が嫌だった。可能なら世界を思うがままに操りたかったんだ。でも、現実的にそれは無理だった。だから、届かないと知っていても努力したんだよ。間違えない人間に、失敗を修正できる人間に。それで、今の私があるわけだ。組織の幹部。ちっぽけでは終わらない、世界にとっての重要人物。副産物としてついてきた対人関係は、今でも役に立っている」
汚い考え方だった。他人のことなんて見向きもしなかった。結果的には私は組織の人間からいいやつ、として扱われているし、実際に何人も助けた。
それでも、それでも私はこう思うんだよ。
「君は……よくぞそこまで綺麗な考えでいられたものだ。そりゃそうだ。積極的に人の不幸を願う奴なんていない。そんな奴は自分が世界で一番不幸だと信じている奴だけだ。でも、そんな奴でも、不幸じゃなかったのなら人の幸福を願うんだよ。……私は、君のような考えをもってこの場に居たかった。君のようで、ありたかった」
幾度となく聞いてきた照の称賛。だがそれは、決して偽物ではない、そういうものだった。
だが、僕の考えは違った。
綺麗な考え? それがなんになる?
まただ。幾度となく湧き上がる自己否定。
『お前は優しいな』と父はよく言っていた。今にして思えば、それは慰めなどの建前の言葉じゃなかったのかもしれない。本気でそう思い、わが子を誇りに思い、褒めていた。
それを聞いていた当時の僕は、今も変わらず、嫌でたまらなかった。
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