女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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82:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 19:31:13.83 ID:KsUO0z3M0
あれから二か月、彼女が僕の日常から消えてから三か月たった。
 組織が手放そうとは思わないほどの人材には、なれている気がする。
 人心掌握。処世術。人間関係。
 すべて順調だった。現実的に可能な完璧に、限りなく近い、と思う。
 組織もまた、動いていた。六十年以上、表立った活動をしていなかった反社会組織だが、なにやら大がかりなことをするらしい。政府への反発として、地表の捜査、魔法の探求などの様々なことだ。確かに、これらのことに関して民衆からの疑問はあった。政府はなぜ新たな探求に手を伸ばさなかったのだろうか? もともと、市民からも声が上がっていた問題だ。
 政府の回答は「今の社会は完璧ではない、その努力を欠かさなかったことはないが、問題がある状態で多くに手を伸ばすことはできない」とのことだった。
 多くの者は納得した。僕だってそうだ。よりよい社会を目指す政府が、余計なことをして、新たな問題が発生したらどうなる? 少なくとも、今の政府は間違っちゃいない。そんな結論だ。
 異論を唱える奴もいた。新たな探求の結果は富裕へとつながり、今ある多くの問題を解決に導くかもしれない、と。だが確実な手ではない以上、多くの民衆からは支持されることはなかった。
 ……そういう意味では、このレジスタンスは実に反社会的で、抵抗的だともいえる。汲み取られなかったわずかな意思。そういったものを拾い上げるつまはじきもの。だからこそのレジスタンスだ。
 魔法は、地表と関係している。だから組織は、それを重要視していた。だが、魔法とは犠牲を除けば役に立たないものだ。ほとんどの人間は、かがり火程度の火を灯すことができる。けれど、結果として待つのは、成果に見合わない体力の消耗だ。五十メートルを全力疾走するほどのそれは、はっきり言って役に立たない。場合によっては死にさえも至る、欠陥品だ。
 だが……犠牲に選ばれるほどの魔翌力を持つ人は、どうなのだろう? 魔法は皆が使えるが、体力の消耗の多さから、危険だとされ、一般的には使用を禁止されていた。でも……内緒で、秘密の場所で、僕らは禁を破ったことがある。今の法を遵守するような僕からしたら、考えられないようなことだけども。
 組織の魔法の研究はまるで進んでいなかった。体力の消耗の大きさからいっても、材料が無さすぎるのだ。だからこそ彼女は、組織としては価値があるはすだ。
 やれるだけのことはやった。彼女のいる場所も偵察してきた。助けに来る実例がほとんどないからだろうか。警備は存外緩く、様々な考察の結果、二割程度の確率で、救出は成功しそうだ。決して高い数字ではなかった。だが現実的な数字ではあった。
 失敗すれば、見せしめの処刑が待っている。
 死ぬのだ。だけど。
 ――命を懸けるだけの理由はある。
 すぺてすぺて、可能な限りにおいて、完璧な行動をとった。すべて順調だった。
 そんなある日のことだった。
「祐樹君、君はボスに呼ばれたようだ」
 照の声。
「どういう理由ですか?」
「重要な理由だよ。とても重要な、ね」
 照は意味深にそう言う。少したりとも、笑ってはいなかった。
「……そうですか」
「なあ、祐樹君」
 照は笑ってはいない。目も口も、何もかも。
「我らがボスはご多忙だ。少し、時間つぶしに話さないか?」


 ◇



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