女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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60:名無しNIPPER
2017/08/17(木) 22:45:57.93 ID:5vAlKS7V0
「聞いてなかったでしょ」
「……ああ、ごめんごめん」

 そういえば途中で卓也も来たんだっけか。彼も彼で、調べたいものがあったらしい。
 僕と彼女より一つ年下の彼は、調べるということに秀でている。元は僕と同じ、法の番人を目指していたが、能力の関係で諦め、歴史の方面に向かった。「裕樹さんはやっぱりすごいや」とその時の彼は言っていた。何を言っても卓也を傷つけるような気がして、僕はその時、何も言えなかった。

「それでなんだけどさ、やっぱり不自然なんだよ」
「えーと、なにが?」
「ほら、やっぱり聞いてなかった!」

 ごめんごめん、と僕は謝る。こういう変わらない彼を見ると、少し安心する。
 彼はむすっとした顔でこちらを見た。

「この都市って独裁政治でうごいてるだろ?いちおう複数人で動いてるけど王の権力が強すぎてなんでもできる状態だし」
「まあ、特に問題はないし、いいんじゃないかな」
「問題がないのはおかしいんだよ。常に優位な地位にある人間が、下位に位置する人間の権利を脅かさないなんておかしいんだ。罰する役割の人がいないんだから、普通自分の権力をさらに大きくするはずなんだよ。しかもこんなにも長い間!」

 この都市の歴史は五百年程度だ。

「まあ、確かに王を止めれる人はいないし、少なくとも王自身はなんでもできるけど」

 僕の言葉は若い熱弁者に遮られる。

「しかも王の継承は長男って決まってるんだぜ? それなのにボンコツな暴君が現れないのはおかしい。いや、現れてるはずなんだ。なのに俺たち一般人がなにか押し付けられたことは一度もない。絶対におかしいんだ」

 卓也の言葉には熱が籠っていた。
 確かに、人間のメカニズム的に人間は自分をより有利な状況にしようとするはずだ、という理論を鑑みれば、王の暴走が五百年間で一度もないというのは不自然かもしれない。おまけにそれを止めれる者もいないの
 だから。

 そういう点で考えてみれば確かにおかしい、という気がしてくる。だが言われなければ絶対に気づけなかっただろう。なにしろそういう視点で見る機会がない。人間の基本的な本能と、王の独裁体制。自力で繋がりを見出すのは難しい。



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