女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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171:名無しNIPPER[saga]
2017/09/15(金) 00:52:02.92 ID:jX7ap57O0

「うるさい……うるさい」

 なにもかもなくなってしまえばいいのに。こんな欠陥だらけの感情も。苦しいだけの思い出も。
 なにかを言いかけてやめる彼女の姿があった。少し恥ずかしそうにしていて、やっぱりやめておこう、という感じの。
 妥協なのかなんなのか、彼女は僕にこう言った。


『家族の次にキミが好きかなー』


「うるさい! うるさい! ……うる……さい」

 認めたくなくて。彼女のことが好きなんだと、思いたくなくて。
 世の中のすべては無意味で、価値なんてないと思いたくて。
 なにもかもを否定したかった。でも、いつも決まって、僕をひきもどすのは彼女の声だ。
 どんな完璧な理屈も、自分の決意も、落ちていく自分を止めなかった。ただ、彼女だけが、感情だけが僕を離してはくれなかった。もうなにもかも、捨ててしまいたかったのに。
 諦めたんだ。すべてには価値がなかったんだって。どうだっていいんだって。
 でもそれなら、僕が最後にした選択はなんだというのだろう?

 泣き声。嗚咽。慟哭。

 認めたくなかった。苦しいのだということを、認めたくなかった。
 僕はゆっくり手を伸ばす。けれど決して叶わない――。


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