女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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154:名無しNIPPER[saga]
2017/09/12(火) 18:44:57.23 ID:bdvuTYni0


「『世界は絶対救われるべきだが、救われないのが現実。完璧な人になりたかった。人の善意は、少なくとも悪いものじゃない』」

 僕の思想。そしてその答え。

「ほんとうに?」

 ――暗い空間になにかがなだれ込む。人の……記憶。

 三人の、少年、少女がいた。彼らは善意で行動をした。しかし、結果がでなかった。結果は他人を傷つけるものだった。取り返しのつかない、ひどい結果だった。

「彼らは失敗したんだ。世の中では結果がすべてだ。けれど彼らは、失敗したんだ」
 静かにそういう賢者。
 僕は彼の言葉にこう答える。

「誰かがそれを認めてあげるしかないんです。努力したことを。少なくとも善意は、悪いものじゃなかったと」
「確かにその通りだ。だが……それは取り返しのつかない時でも言えるのか? 人が死んでるんだ。苦しまなくてもいい奴が苦しんだんだ。耳が聞こえなくなったものは、一生不自由さが付きまとう」
 人の善意は少なくとも悪いものではないかもしれない。だが、それが取り返しつかない結果を生んでしまったら?
「彼らは罰せられるぺきだ」と賢者は言った。
 なにも言い返せなかった。善意のために失敗した者たちに、お前は悪くないといってやりたい。しかし、その被害者はどうなる? 僕が悪くないと言えばそれは被害者に対する冒涜だ。いいことだけを言う、偽善行為だ。終わったことだと、被害者の意思を汲み取らない悪事だ。
 どちらかにつけば、どちらかを否定することになる。
 それでも。

「いいえ」と僕は言う。

「なぜ?」
「現実問題として、その結果的加害者は罰せられるべきかもしれません。でも僕個人はそうしません」
「なにをするんだい?」
「僅かな救済」

 いつだって、僕の答えは変わらない。

「加害者に、『お前は悪くない、しかし罰を受けるだろう、けれど僕はお前を認める』と言います。このことは被害者は知りません」
「誰に彼にもいい顔をするって?」

 思わず苦笑する。嫌な言い方を、わざとしている。

「被害者への否定はなかったことになります。知らないんですから。加害者は少しだけ救われます。誰かが僅かに、そいつのことを肯定したんです。僕は卑怯なことをします。加害者には、お前悪くない、といい。被害者にはそのことを知らせないんですから。でも、それでいいんです。程度さえあれ、結果的に誰もが救われている」
「どうだろうか? それがばれるかもしれない。嘘をつきとおせる保証などどこにもない」
「そうですね。でも少なくとも、怒りの矛先は僕に向くはずです。加害者と被害者がまた争い始めることはない」
「……君は馬鹿なことを言ってる。君が怒りを代わりに受けるのか? 不条理の犠牲になって? ばかばかしいじゃないか、そんなの」

 そうかもしれない。
 だがそれでも、僕の答えはいつだって変わらないのだ。
 世界は絶対に救われるべきで、救われないのが現実。
 しかし、せめて助けようとはするべきだ。
 そういう考え。

 僕がこれをして殺されたりするなら……やらないかもしれない。だが恨みが向くだけだ。僕は出来る限りを現実的に可能な限り救う。時には見捨てなければならないときだってある。けれど、この考えは、きっと正しい。

「君だけが損してる。君は愚かだ」

 英雄的行動に酔っている? 善意を振りまくことために狂っている?
 なにかに影響されたがゆえの思考停止?
 ……いいや、そうではない。


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