女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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150:名無しNIPPER[saga]
2017/09/12(火) 18:42:18.45 ID:bdvuTYni0



 彼女のことを考える。楽しかった時の思い出。些細な苦労と、乗り越えた時の喜び。それらすべては、僕にとって大切な宝もので。

「君は死ぬのかい?」

 ――声が聞こえる。

「大切な人を置いて、諦めて、死ぬのかい? 君は言っていたはずだ。『彼女』が生き続ける限り、自分も生き続けたい、と。そんなばかばかしいことを、言ったはずだ」

 無理だ、と思った。もうなにもかも限界で、擦り切れていて、人としての領分を超えている。

 ――誰かの声が聞こえる。

 若い声。僕の知っている、大切な人の。死んでしまった、願いの籠った意思。

『約束してくれ』

 ――目を覚ます。

「は……あ、はあ、はあ……」

 何も見えない空間。最初にそう思った。しかし、目の前にぼんやりと人影が現れた。僕はこいつを――知っている?
 たぶん前は、顔が見えなかった。しかし、今は見える。
 冷酷な顔だった。なんら感情をたたえていない、まるで機械のような、人間ではないような、そんな表情。
 彼は僕の方を見て微笑む。途端に雰囲気がかわった。人を安心させるような、自然とそう思ってしまう表情。彼が微笑むのを止めれば、また感情をたたえていない表情に戻った。

「大丈夫かい?」
「ここは……?」
「どこだと思う?」

 止まっていた頭を動かす。僕は砂漠で力尽きたはずだ。最後に見た光景は、開いていく扉と、視界に指す光。そびえたつ塔。

「賢……者……?」

 確かめるように、その言葉を喉に上らせる。


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