女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
1- 20
149:名無しNIPPER[saga]
2017/09/12(火) 18:41:51.82 ID:bdvuTYni0

「なあ、任されてくれるかい?」
「……」
「君が人を導いてくれ。私にはその資格がない。もうことは起こってしまった。人が死んでしまった。だから……現実に迎合した理想の世界を、作ってくれ」
「……」
「君は断らない。君ならば、やれるだろう」

 男には相手の感情が見えていた。自分を悪だとわかってるその感情と、それでもやらなければやらなかった、矛盾を。

 ――世界は絶対に救われるべきだ。そう唱えた奴が、世界の人間を殺しつくした。

 やりたくなかった。そしてなにより、誰かの悲鳴を聞きたくなかった。他人の苦痛の声は自分にとっても苦痛だった。
 男は白衣の男の手を握る。それに白衣の男は救われたような顔をした。
 男はそれを見据える。目の前の者は償い切れない罪を犯した。だが、それでも――。
 脳裏に浮かぶのは理想を語ってた白衣の男の姿だ。彼は本気でその理想が正しいと信じ、また、叶わないことを知っていた。

「あなたは許されるぺきじゃない。でも、周りが何と言おうと、僕はあなたの気持ちを知っている。苦悩を、悲しみを知っている。僕はあなたを助けません。でも、こぼれ落ちたその罪を、僕が背負います」

 焼き尽くし、根絶やしを広める緑の炎。分散され、空気に散っていく、人を殺す魔素。

「ありがとう」

 許しを乞い、求める声。

「ありがとう……」

 命の鼓動が止まっていく。
 男はたったひとりで辺りを見渡す。
 できる限り理想に近い、そんな世界を作らなければならない。
 死んでいく者たちを見ながら、そう思った。
 それが、これからの生涯の使命だった。

 ◇


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
187Res/253.48 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice