女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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104:名無しNIPPER
2017/08/31(木) 21:51:49.26 ID:iVDTxJdE0

 いつだって思い出す。
 秘密の場所。薄暗い空間。風の舞う感触。
 甘い匂いが鼻腔をくすぐる。

 ――彼女の後姿が頭によぎる。

 今に振り返る、そんな一瞬の写真のような思い出。
 泣きそうになる。彼女のことがどこまでも大切だった。

 ――きっと。

 どこかでは告白して、付き合って、キスをする。一緒に子供を育てる。「幸せだね」なんていう彼女の笑顔を見て、余韻に浸る。

 ――そんな未来を信じていた。

 きみさえいてくれれば、僕は幸せでいられる。きみじゃないと嫌なんだ。
 落ち着いた雰囲気で一緒にいられること。たまにだけどふざけあうこと。
 どうしても、どうしても――。

 僕の命は、僕のものだ。いくら彼女が大切でも確実に失敗するとわかるようなものには、成功率が七割を下回るような愚かな行動に、かけることはできない。
 自分が理性的な人間であることを望んだ。そういうひとでありたかった。

 ――だけどどうしても、僕は。

 ……これだけは、諦める、ということができなかった。

「わかったか? わかったなら――」

 ボスは話は終わったとでもいうように後ろを向いている。
 そして僕がこのまま立ち去るのを望んでいる、ここで完結したと確信している。
 だけど、

「まだです」
「……は?」

 ◇


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