60: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/09/03(日) 07:06:51.87 ID:TCQYYDI0o
ダイヤ「『江戸の子守唄』……」
お琴の有名な曲の一つ。
ルビィが投げ出した曲の一つ。
数分の演奏の後、ゆっくりとルビィはわたくしの方に振り返り。
ルビィ「──」
静かに礼をした。
ルビィ「……まだ、この曲しか出来ないけど」
そういってからゆっくりと立ち上がる。
わたくしをまっすぐ見据えて。
ルビィ「お姉ちゃん」
ルビィの言葉に身構える。
ルビィ「扇子借りるね」
予想と違う言葉が──いえ、もう、ルビィが何をしようとしてるのかわかった気がして。
わたくしは何も言いませんでした。
扇子を手にルビィがゆっくりと──舞い始める。
──しゃなり。
──しゃなりと。
どこかで見たあの舞を。
どこかで見せたあの舞を。
──始まりの舞を。
そして、続いていく舞を──
舞が終わると。ルビィと目が合う
もうこの子に今伝える言葉は一つだけだと思った。
およそ15年間、苦楽を共にした、妹に。
ずっと、わたくしの後を付いて来てくれていた──愛しい妹に。
また、誰よりもわたくしの弱さを知って傍らで支えてくれた──優しい妹に。
そして、わたくしのこれから選び、迷い、歩く道を照らす、篝火のように──頼もしくなった妹に。
ダイヤ「黒澤家の跡継ぎのお役目──お願い致します。」
公式な取決めなんかではない。
それでも、わたくしとルビィの間で、何よりも大切な契りの言葉。
姉妹の契りを──わたくしはルビィに託すという形で、選びました。
* * *
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