59: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/09/03(日) 07:05:16.68 ID:TCQYYDI0o
部屋の外で話すのも、と思ったのでルビィを部屋へ招き、向かい合う。
ルビィ「お姉ちゃん」
ダイヤ「なんですか」
ルビィ「ルビィは……"黒澤ルビィ"は、元網元黒澤家の時期当主として、この家を継ごうと思っています。」
ダイヤ「……」
ルビィ「お姉ちゃんはどうしたい?」
ダイヤ「……わたくしは……」
わたくしは……その後の言葉が続かない。
ルビィ「ふふ……そうだよね」
ダイヤ「え……?」
ルビィ「お姉ちゃんは優しいから、自分からは言い出せないの知ってるから」
ダイヤ「…………」
ルビィ「ちょっと待っててね」
そう言って、ルビィは1階のわたくしの自室から、中庭に通ずる廊下の障子を開けた。
ダイヤ「……ルビィ?」
そこにあったのはお琴。
わたくしがずっと習い続けた、いつの日かルビィが投げ出した……お琴。
ルビィは何も言わず、窓の外を見たまま──つまり、わたくしに背を向けたまま、琴の前に腰を降ろす。
今まで見たことがないほど、流麗な所作で滑らかに。
親指、人差し指、中指にそれぞれ、琴爪をして。
軽く調律をしてから、弾き始める。
まず琴をやるならば、誰もが最初に習うであろう曲。『さくら さくら』
ダイヤ「……」
その聞きなれた、曲を黙って聴く。
──綺麗な音色ね。
昔は少しでも難しいと思ったら、すぐに投げ出してしまう子だったのに。
こんなに綺麗にお琴が弾けるようになったのね……。
長い曲ではないので少しの間、聞き入っていると『さくら さくら』が弾き終わる。
ダイヤ「……これが、貴方の覚悟ということですか」
わたくしは、ルビィの背中にそう投げかけた。ですが、ルビィから返事は返ってきませんでした。
──ルビィはそのまま、次の曲を弾き始めたからです。
ダイヤ「え……」
儚げな音色、でも優しい音色。
小さな頃、母が歌ってくれた、そしてときにわたくしがルビィに歌ってあげた子守唄。
ねんねんころり。
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