32: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:14:13.06 ID:F1z6JHSwo
どこかで気づいていたのです。
私にだけ見える『しおり』は、この世界に生きている存在ではない、と言うこと。
私の隣にだけいる、誰も知らない友達。
33: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:14:41.52 ID:F1z6JHSwo
本当は、わかっていたのです。
生きている私と、生きてはいないしおりとは、一緒にいてはいけないということを。
34: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:15:11.22 ID:F1z6JHSwo
『しおり』。
塩・潮・汐、……「波の花」。
35: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:16:05.80 ID:F1z6JHSwo
私にはしおりが必要でした。
けれど、私が呼ぶその名が彼女と海とを結んでいる。
36: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:16:43.60 ID:F1z6JHSwo
それなら。
名前を、つけましょう。
37: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:17:10.11 ID:F1z6JHSwo
あの日、貝殻と一緒にしおりが私のもとを訪れたことを思い出して。
38: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:17:39.29 ID:F1z6JHSwo
―――
夢を、見ない日が続きました。
39: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:18:07.36 ID:F1z6JHSwo
貝殻を依り代にして、私の中に、……いえ、私の隣につくった女の子は、これまでの『しおり』とは違って、
明確に一つの、一人の女の子でした。
40: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:18:37.15 ID:F1z6JHSwo
彼女を作ってからも、彼女に与える名前はなかなか決まりませんでした。
辞書を引いて、いくつもの漢字を日記の隅に書き連ねて。消して。
41: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:19:28.98 ID:F1z6JHSwo
その時知った「栞」という字、それはきっと今までの『しおり』に与えるべきだった名前で。
そして、「枝折」という字。
42: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:21:13.60 ID:F1z6JHSwo
同じように、可愛らしくない字、不吉な字、しっくりとこない字は頭の隅へと追いやって行きました。
死・肢・檻・汚・尾・離・裏。
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